存在論的転回(ontological turn)とは?

存在論的転回(ontological turn)とは?
西洋思想の〈自然〉概念の解体を試みるために、一部の人類学者の人(代表的なのはビベイロス・デ・カストロやデスコーラ(後者はCollège de Franceの教授))が提唱した思考実験――僕はかなり法螺にちかいと思っているが。他にも認知科学のひとでアフォーダンスなどをやっている一部の人にもシンパがいる。さて、この思考実験の要衝は次のようなものです。西洋思想の〈自然〉概念は形而上学化していますが、非西洋の(具体的には南アメリカの先住民)の人たちの〈自然〉概念は、具象化――アニミズムやトーテミズムがその代表――しており、人間と自然物の間の視点の転換(=ニーチェのパースペクティヴィズムそのもの)が容易になされている。例えば、密林には、人間の生活と、野生動物の生活が〈完全に〉パラレルした世界があり(例えば)人間がビールを飲むように、ジャガーは人間や他の動物の血を飲む。このように、人間は自然を対象化しているが、同時に(人格化された)自然も、人間を対象化している。つまり、ニーチェの視座の転回を存在論にまで拡張して、多元的な存在論がこの地球上にあるという主張を、そのエピゴーネンたちが革新的だと喜んで(たぶんローティの言語的転回(linguistic turn)になぞらえて)存在論的転回(ontological turn)と呼び習わすようになりました。1990年代末以降から今日までの人類学の一部のトレンド(ないしはカルト、もっと上品に言えば学派)のことです。
◎パースペクティヴィズム
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/121026perspectivism.html