ブラジル人女性医療過誤訴訟関連

なるほど、医療拒否はあるかと思いますが、日本の医師法には応召の義務項目(欧米には法的には規定されていないらしい)というのがあって、露骨にはできないようになっています。また、多文化主義だけでなく、グローバルスタンダードは医療施設側が通訳をつけるべしという方向に流れています。ということは、現在の保健システムでは、国民健康保険でカバーしている医療に通訳が必要とされる場合には、その費用を国家が負担すべきという方向性が生まれる可能性はゼロではありません。この訴訟は、我々にはむしろ、災い転じてではありませんが、だから「質の高い医療通訳を!」と売り込めるチャンスと考えればどうでしょうか。訴訟にはさまざまに考える材料があるので、訴訟を起こしたブラジル人の女性および原告の弁護士さんの勇気ある行動に感謝しています。
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「手術前の説明不十分」 聖隷浜松病院に2000万円損賠提訴−後遺症のブラジル人
2008.02.16 朝刊 30頁 静岡 二社
 後遺症の危険性について医師の十分な説明がないまま人工透析用の血管手術を受けたところ後遺症が残って仕事を続けられなくなったとして、糖尿病患者のブラジル人女性(54)=菊川市=が十五日までに、手術した聖隷浜松病院浜松市中区)を運営する聖隷福祉事業団に、慰謝料など約二千万円の損害賠償を 求める訴訟を静岡地裁浜松支部に起こした。
 訴状によると、女性は平成十八年十二月四日、同病院で医師から手術の説明を受けたが、後遺症や合併症の可能性について具体的説明はなかった。九日後の手術時には誤って神経を傷つけられて左腕に運動障害を負い、術後に二度目の手術が必要となった上、後遺症のために仕事を辞めて家計にも影響が出たという 。原告側は「後遺症の可能性を知っていれば勤務への影響を考えて、手術に同意しなかった」と主張している。
 原告代理人の高貝亮弁護士によると、女性は片言の日本語しか話せず、一度目の手術の事前説明時に医療通訳は付いていなかった。高貝弁護士は「医療通訳がいなかったために意思疎通がはかれなかった可能性もある」と指摘している。
 同病院安全管理室は「訴状の内容を十分検討し、真摯(しんし)に対応していきたい」としている。浜松国際交流協会の説明では、医療通訳の設置に関する法的規定はないという。
静岡新聞社
聖隷浜松病院側、請求棄却求める−医療訴訟、初弁論
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2008.03.06 夕刊 2頁 静岡 夕二社
 後遺症の危険性について医師の十分な説明がないまま人工透析用の血管手術を受けたところ後遺症が残って仕事を続けられなくなったとして、糖尿病患者のブラジル人女性(54)=菊川市=が聖隷浜松病院浜松市中区)を運営する聖隷福祉事業団を相手取り、慰謝料など約二千万円の損害賠償を求めた訴訟の第 一回口頭弁論が六日、静岡地裁浜松支部(酒井正史裁判官)であった。病院側は請求の棄却を求める答弁書を提出した。
 訴状によると、女性は平成十八年十二月に同病院で医師から手術の説明を受けたが、後遺症や合併症の可能性について具体的な説明はなかった。その後の手術で誤って神経を傷つけられ、左腕に運動障害を負うなどの後遺症が残った。説明時に医療通訳はついていなかったという。答弁書で病院側は「後遺症の危険 性に関しては事前に医師が説明した」としている。
静岡新聞社