脳が貧弱になる?――病理的な意味ではなく比喩表現として

オーディオ用真空管「ネット上には広告とうわさ話があふれ、信頼できる情報があまりに少ない――NIIの高野教授はそう考え、プロが編集した情報をネット上に引っ張り出そうと試みる。/ネット上の情報がこのままの状態だと日本人の“アタマ”が危ない――国立情報学研究所(NII)の高野明彦教授は警告する。日本語ネットコンテンツの多くは、企業が運営する商用サイトか、裏づけのない情報が飛び交うブログや掲示板。中立的で信頼の置ける情報が充実しているとはいえない。/「情報の質が下がれば、それに合わせて脳も貧弱になってしまう」と高野教授は心配し、ネット上に信頼できる情報を増やしたいと話す」(出典)。
◎刑吏の鞭がいいか、治療者の電パチがいいか?
「薬物使用者に対する司法判断に変化が見られる。刑罰だけに限らず「薬物依存」という性癖からの脱却を視野に入れた社会優帰の手法で、成果が注目される。
大阪本社地方部 竹村 登茂子/従来、成人の薬物使用の逮捕歴が複数回なら、司法判断は実刑だった。しかし専門的な生活習慣の是正などを勘案して実刑を見送る例が最近、見られる。/この動きの原動力の一つになっているのが、薬物事件の再犯を防ぐ活動をしているNPO「アジア太平洋地域アディクション研究所(略称・アパリ=群馬県藤岡市)」だ。ここでは起訴後、保釈された刑事被告人に対して、正しい薬物に関する知識や、規則正しい生活などの指導を約二週間行い、成果を裁判所に提出している。これまでに十人が保釈中に入所して改善指導を受け、うち二人が、薬物事件の再犯者ながら大阪、札幌の裁判所で、実刑ではなく「執行猶予」の判決を受けた。/昨年十月に判決が出た札幌の事例は、覚せい剤取締法違反で二度目の刑事処分をうけた男性(34)に対するものだった。男性は、保釈中に「薬物依存」状態を改善するためにアパリに通い、「依存」を克服した。この点を裁判所が実刑回避の判断材料にした、といえる。/同様の例は、少年の薬物事件でも始まっている。福岡弁護士会の池田耕一郎弁護士は昨年春、覚せい剤取締法違反で身柄を拘束された十八歳の少女を担当した。それまで少女は約一年間にわたって覚せい剤を使用し、頻度などから少年院送致の可能性が高いと思われた。/しかし付添人池田弁護士は「これは薬物依存の病気であり、治療を優先するべきだ」と主張。薬物治療で実績のある国立肥前療養所(佐賀県)の医師と協力して治療計画を作成し、家庭裁判所と話し合って試験観察中に依存症治療を行うことにこぎつけた。この少女は、依存症という「病気」の自覚、誘いを断わるといった自己主張の練習などの治療を約半年間続けた結果、八月に「不処分」の審判が出た。/警察庁によると、覚せい剤取締法違反の検挙者数は二〇〇〇年一年間で約一万九千人。十九歳以下の少年も千百人を超えるなど低年齢化が進み、約七年前から始まっている「第三次薬物乱用期」は延長の兆しを見せる。/日本では正当な理由のない薬物使用はすべて「違法」で、治療の必要性が論じられる前に「刑罰」に結び付く。だが、自己使用を繰り返す人間を刑務所や少年院だけで治療しても、薬物で再逮捕される確率は例年、50%前後になる。/「裁判官自身、同様の判決を繰り返すだけではむなしいと、感じ始めているのではないか。」アパリに三人の被告人の入所を勧めた金井塚康弘弁護士(大阪弁護士会)は説明する。/ ″薬物先進国″アメリカでは、医療機関などで治療することで刑の執行を猶予する「ドラッグコート」制度など、薬物依存症に対する対応は多彩だ。龍谷大学石塚伸一教授(刑事学)は「長く薬物を自己使用する人は『依存症』という病気だ。犯罪ではあっても依存症者が早く専門性の高い医療機関と連絡がとれるよう、枠組みを変えることが必要」とする。/薬物汚染が広がる中、規制や刑罰も重要だが、生活習慣の改善や治療に多様な手法が試行される時代となっている」(出典)。