アナ・カロリーナ・レストンの死

[問題]
2006 年12 月ブラジル人スーパーモデルであったアナ・カロリーナ・レストンの死亡をめぐり、少なくともスペインとイタリアの政府はBMIボディマス指数, Body Mass Index)が18 未満のモデルをファッションショーへの出席を禁止した。
別添の資料などを参考にして、神経性食欲不振症(anorexia nervosa)について理解し、(1)なぜ痩せすぎのモデルがショーへの出演を主催者が拒否する根拠はなにか、(2)国家がモデルを拒否しなければならない主張の根拠とはなにか、(3)日本や米国のように痩せすぎのモデルを容認していることの根拠はなぜか(アナのモデルとしての成功は日本での活躍が大きかったと母親は娘の死後に証言)。以上3つの点を明らかにしなさい
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写真(右)は現役時代のAna Carolina Reston(1985-2006)と、彼女の死後ブラジルで撮影した家族との写真を掲げる母親のミリアム 著作権の関係で写真は省略しています。見たい方はgoogleのイメージ検索などでご覧ください。
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【事件】
2006 年11 月に、ブラジル人モデルのアナ・カロリーナ・レストン(Ana Carolina Reston, 1985-2006)がストレスによる拒食症が原因で、死亡した事を受けて、スペイン、イタリア政府は同年12 月に、「やせ過ぎモデルは、少女たちに異種の思考を植え付ける」として、BMI が18 以下のファッションモデルのファッションショー出演を禁止した。アナの死をきっかけに、痩せすぎが原因で死亡したモデルの事例が次々に発覚し、「痩せ過ぎ=不健康」という指摘が強まった(以上出典:http://ja.wikipedia.org/wiki/の「ファッションモデル」の項目(一部改変))。※BMI とはkg 体重を身長(m)の二乗で除したもの。
【各国の反応】
フランス下院は15 日、拒食症・やせ過ぎを助長するようなインターネット、雑誌、広告を違法とする法案を採択した。/ロズリーヌ・バシュロ(Roselyne Bachelot)保健・青年・スポーツ相は、同法案は女性に拒食症などやせ過ぎを促すインターネット上のメッセージを防止するためのものだと語る。「若い女性が医者に嘘をつくよう仕向け、吐き出すのが簡単な食べ物を口にするよう勧め、食事のたびに自分を責めるよう促すことを、表現の自由とはいえない」。バシュロ保健相はさらに「このようなメッセ−ジは『死のメッセージ』だ。我が国では、メッセージを掲載しているウェブサイトの関係者を告訴できるようにするべ
き」と付け加えた。/同法案が上院で承認され施行されれば、違反者には最高2 年の禁固刑と3 万ユーロ(約482 万円)の罰金、違反者の行為により死亡が発生した場合には、3 年の禁固刑と4 万5000 ユーロ(約723 万円)の罰金が課される。[出典:http://www.afpbb.com/fashion/2842495(2008 年4 月17 日付 モードプレス)]
【業界の対応】
[仏、伊、米、英の]4 か国代表会議に参加したフランス・オートクチュール協会(The French Couture Federation)のディディエ・グランバック(Didier Grumbach)会長は「我々は、問題の原因は‘規制’よりも‘情報’にあるという見解で一致した。各国が協力して問題に取り組んでいくことになった。」とコメント。正しい情報提供が拒食症を含む健康問題全般に対する最善策ではないか、という結論だ。/会議には、フランス・オートクチュール協会の他に、イタリアファッション協会(Camera Nazionale della Moda Italiana)、アメリカファッション協議会(CFDA)、イギリスファッション協会(BFC)から代表が参加した。各国が自国の政府とともにこの問題を積極的に取り組むことを確認。[ 出典:(http://www.afpbb.com/fashion/1272955)]
【医学的所見】
「神経性食欲不振症(anorexia nervosa)は,若い女性にみられることが多く,器質的ならびに特定の精神的な疾患がないのに,食行動の異常と高度のるい痩を示す病態をさす.DSM‐IV ならびにICD‐10 では,以下の項目を満たすことが必要とされる.1) 標準体重の−15%以上のやせ,2) 体重減少は「太る食物」の拒否,自己誘発性嘔吐,下剤の自発的使用,過度の運動,利尿薬の使用などにより患者自身によって引き起こされる(ICD‐10 のみ),3) 肥満することへの極端な恐れ,4) 身体イメージの障害(やせ細っていても「太っている」と主張する),5) 無月経をはじめとする内分泌系の障害.その他の症状として,さまざまな食行動の異常(過食,隠れ食い,盗み食いなど),栄養不良による二次的な身体症状(低血圧,徐脈,うぶ毛密生,貧血,低カリウム血症,脳萎縮など),治療に対する抵抗,情緒不安定などが認められることが多い.実地臨床では予後のよい神経症圏の症例から,人格障害を背景にもつ重症例までさまざまである.したがって本症の根本的な原因は現時点では明らかではなく,本人の人格的脆弱性,家族関係や発達課題などの心理機制,生物学的要因,社会文化的要因などが相互に複雑に影響しあって発症すると考えるのが妥当である.近年の特徴は,過食を伴う非定型例や神経性過食症bulimia nervosa(→過食症)が増加し,年齢的には思春期のみならず小児期から成人,既婚者まで層の広がりがみられる」.出典:『南山堂医学大辞
典(第18 版)』
【母親の懇願:モデルという商売は命を賭けるものではない(=モデルに命を賭けないで)】
Mother's plea: modelling isn't worth life
The mother of a Brazilian fashion model who died from anorexia has made an emotional appeal for parents to take better care of aspiring models.
Ana Carolina Reston, 21, died in hospital on Tuesday from an infection caused by anorexia. She was about 1.72 metres tall but weighed only 40 kilograms. This is considered a normal weight for a 12-year-old girl no more than 1.5 metres tall.....
"Take care of your children," Reston's mother Miriam told O Globo newspaper. "No money is worth the life of your child. Not even the most famous (fashion) brand is worth this." She said her daughter had been trying to help her family with the money she made as a model.
Ms Reston spoke on national television and to local newspapers to highlight the issue. She said she had pleaded with her daughter to eat more and to see a doctor.
"She would reply, 'Mummy, don't mess me around,"' she told one paper.
Over a picture of Reston wearing lingerie, the tabloid O Dia ran the headline: "Dictatorship of skinny look kills a model."
source:www.theage.com.au/news/entertainment/mothers-plea-modelling-isnt-worth-life/2006/11/17/1163266782092
.html(ただし下線は引用者)
教科書:レッスン2(身体観の箇所pp.46-48)、レッスン8(ジェンダーと身体、権力のかかわりからみ
る身体)