人類学的見地からみた倫理問題

道徳の普遍性に関する議論(モンローによる)

デイヴィッド・ヒューム『道徳原理の探求』(1751)
 ヒュームは行動の表面上における多様性を認めるが、それは究極的な道徳的信念から生じるとしている。「もしあなたがアテナイの或る親に向かって、なぜ生まれたばかりの子供の生命を奪ったのか、と尋ねたら、愛しているからだと、彼は答えるだろう。そして、自分から受け継ぐことになる貧困の方が、子供がそれを恐れることも感じることも反発することもできないところの死よりも大きな悪だからだ、と答えるだろう」(ヒューム:モンロー;522より孫引き)

●レイモンド・ファース『社会組織の諸要素』Elements of Social Organization,p.214, Sir Issac Pitman and Sons;1961
 すべての人間社会において正邪の基準が存在する。この諸基準には多様性があるが、その背景には「明確な斉一性」があると主張。性に関するルールや暴力に対する抑止には、「一般的原則」が見られる。彼によると人類学者は「道徳的普遍を拒否するのではない。彼はそれを彼の社会的素材の本性そのもののうちに探求するのである」(モンロー:523よりの孫引き)。
(Elements of Social Organization,は邦訳ありR・ファース『価値と組織化』(正岡寛司監訳)早稲田大学出版部,1978)
・人類学者・言語学者の研究では、「未開社会」には価値判断を含む語彙はあるが「道徳」や「倫理」などより上位の包括的な概念がないという指摘はあったようだ。例えばアルハンゲルスキー『マルクス主義倫理学の基礎概念』に引用(p.57)されているR.B.ブラント『ホピの倫理』(出版地:シカゴ)1954年。
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