日暮途遠

「伍員は申包胥【しんほうしょ】と友誼を結んでいた。伍員が逃亡する時、申包胥に次のように言った。「俺は楚を滅ぼしてみせる」と。申包胥は言った。「私は楚を救ってみせる」と。呉軍が郢に入ると伍子胥は昭王を捜させた。しかし昭王はすでに逃げ去った後であった。そこで平王の墓をひっくり返し、死体を掘り出した。〔伍子胥は死体に〕鞭を300回入れ、そこでようやく手が止まった。/申包胥は山中で〔その話を聞き〕伍子胥に人を遣って伝えた。「君の仇討ちは普通ではない。私は『人は勢いが優れれば天に打ち勝つが、一度天がこれと決めれば人はこれを破ることは出来ない』と聞いている。君は〔仮にも〕亡き平王の臣下であった。親しく仕えておきながら、今になって死人を辱めた。これは天道に背くことの究極ではないか」と。/伍子胥は〔その使者に対して〕言った。「彼(=申包胥)に伝えてくれ。『もう日が暮れて〔手遅れになって〕しまったのに、まだ〔私の望む〕道は〔手の届かない〕先にある。だから私は人として進むべき道に逆行し、道を外したのだよ』とね」と」。
出典:『史記伍子胥伝:翻訳:http://chinesegarden.jp/china/enc-goshisyo.html