加藤茂明教授の手口

【秋山教授の手口】
 ――合法か脱法かが今後の審理の争点
「起訴状などによると、秋山容疑者は2010〜11年、厚生労働省補助金などを受けた9件の研究事業で、島根県のIT関連会社など6社がデータベース作成などの業務を受注したように装い、東大と岡山大学から研究費計約2180万円を6社の口座に振り込ませてだまし取ったとされる。うち約1900万円は、同容疑者が実質経営する「有限会社ARI」に再委託される形で渡り、大半が取締役だった元妻への役員報酬や従業員の給与、同容疑者の自宅兼事務所の家賃に充てられたという。これに対し、弁護側は金の流れは大筋で認める一方、6社が業務を統括し、ARIに作成させたデータベースなどを大学側に納品していると主張。元妻への報酬や従業員の給与、家賃は、この業務を行うために必要な経費であり、「6社の業務が実態のないものだとする特捜部の主張は当たらない。教授による私的流用もない」と反論」読売)2013年8月15日追記

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「東大論文不正:研究者同士競わせる 元教授、有名誌発表で圧力
毎日新聞 2013年07月26日 東京朝刊
 東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(昨年3月に辞職)のグループによる大量の論文不正が25日、発覚した。大学の調査委員会が「撤回が妥当」と判断した論文は16年間で計43本と、加藤氏が在職中に発表した全論文の4分の1に上る。加藤氏自身は不正の指示や関与を否定しているが、世界的研究者の前代未聞の不正を生んだ背景には、メンバーを複数の小グループに分け、有名科学誌への発表成果を競わせる研究室の運営手法があったとみられる。
 加藤氏によると、研究室には最大50人以上のメンバーが所属し、年間の研究費は約2億円あった。この分野では国内有数の規模だ。加藤氏は「研究費に見合う、世界で通用する成果を出さないとダメだ」と圧力をかけ、メンバーを3〜5の小グループに分けて競い合わせた。実験は各自の得意分野を生かし、分業体制で進めたという。
 研究者は論文の質や量で評価され、研究費やポストの獲得に直結する。英国の「ネイチャー」や米国の「サイエンス」「セル」など有名科学誌は世界の研究者の注目度が高く、加藤氏も「(研究者としての)世界が変わる」とメンバーに投稿を強く勧めた。
 ただし、有名科学誌のハードルは高く、あいまいさのない「きれいなデータ」が求められる。判明した不正の大部分は、データを示した画像を改ざんしたり、別の実験データを使い回したりしたものだ。成果が出ないメンバーを「(研究をやめて)臨床に戻れ」と叱責し、その後に「あまりにもきれいなデータが出てきたこともあった」という。加藤氏自身は画像の改変にタッチせず、実験結果に助言したり、論文を修正する役割だった。
 加藤氏は「僕の要求が厳しかったので、メンバーがついてこられなかったのかもしれない。“性善説”の研究室だったので、互いにチェックすることがなかった。自分は管理者として失格だった」と肩を落とした。
 こうした研究室運営について、研究不正に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「生命科学は最近、研究者の数や大型の研究資金が増え、特に競争が激しくなった分野。成果を求めるプレッシャーが高まれば、不正を生む要因になり得る。最初はデータをきれいに整えるために画像を操作する程度だったのが、徐々にエスカレートしていった可能性がある」と指摘する。【藤野基文、西川拓】」
※出典 mainichi.jp/feature/news/20130726ddm041040040000c.html