直示(deixis)

直示(deixis)は、トドロフとデュクロの事典(邦訳)では指呼と訳されている。この機能をもつ語は、フランス語で指呼語(déictique)であり、ヤコブソンは転移語(shifter, F. embrayeur)と呼んだ。バンヴェニストは、指呼語が、言語であるにも関わらず現実の使用との関係においてのみ規定されることから、この語(=指呼語・直示語)が、言語の「内部」へのディスコースの侵入であるとした。ディスコースは、ふつう、我々の現実のあり方の政治的正当性を言語で表象する最たるものと言われることが多いが、バンヴェニストの主張を採用すると、言語の内部に対して反響のようにおなじく言語的実体が侵入する(=自己規定をする自己)というのだ。