テロとの戦争:軍事消息

 マリの空爆を停止させるためにアルカイダ武装組織がアルジェリア東南部の遠隔地で西側関係者を多数拘束したゲリラ的行動は、初期の軍事的行動(政治目的をもった奇襲)としては見事であり、それをいち早くインターネットを通して国際社会にアナウンスしたことは「軍事的には適切な行動/作戦(militarily optimal action/operation)」である。
 問題は40名も人質を拘束しつづけることは奇襲側にとってもストレスであり、彼らが信頼できる交渉人が現れるまでに(見せしめの)犠牲者が出る可能性がある。人質の国籍が多様であることは西側には、人質奪還の戦術に(政府間の)合意をとることが時間がかかる。フランスの特殊部隊の投入となるが、アルジェリア政府側の協力はとりつけにくいかもしれない。
 ここで言う政府間の秘密合意は、軍事的制圧行動に伴う犠牲者の数と被害の規模だ。(軍事的にいくらナイーブとはいえ当事者が含まれる)日本政府関係者が人質解放の非公開の戦略会議に参画するはずだろうが、その時の犠牲の規模に関する最終決済は政府の責任になる。安倍政権には最初の軍事上の試練になる。テロとの対決は、どの先進諸国首脳にも「必須科目」なのだから。
 アルカイダ組織の軍事的統率力や、それぞれの兵士のスキル――粗暴な拉致誘拐の能力はあるだろうが、人質管理(それも異教徒への)のセンスはゼロかもしれない――。もちろん武装の規模や兵士の戦闘能力においてはトゥパクアマルの比ではなく、志気も高い可能性がある、チェチェンのモスクワ劇場事件(2002)やオセチアの学校虐殺(2004)の二の舞いにならないような対応策を講じるべきだろう。