死刑制度なき場所には安楽死はあってはならぬ

(オランダの)安楽死の合法化というのは、当事者の自己決定にもとづき医学的な監督のもとにおこなわれるという。これに関する強い反論は自力で自殺できない人間(当事者)へ自殺幇助だから容認できないというものだった。しかしこの解釈は自殺(自ら命を絶つこと)が自己完結していないということと、自殺遂行の決定がひょっとしたら「社会的理由」によるもの――死が近い寝たきりや苦痛は死と交換してもなお人間にとって耐えられないものだ――というイデオロギーを考慮していない点で限界がある。社会という法廷が当事者に下す「死刑宣告」に他ならないと考えれば、死刑制度なき場所には安楽死などはあってはならないことになる。