震災復興がもつ特殊な「力」それは研究推進力

内患外憂? 日本の学術推進を担うもっとも大きな政府系(文部科学省)の研究基金の団体である日本学術振興会の安西理事長は、次のような、2つ――私にとっては相矛盾する気がしないではない――の目標をもって、資金援助(funding)の方針を語っている。
(A)「本年3月11日に起こった東日本大震災は、未曾有の大災害として我が国に甚大な被害をもたらしました。被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げますとともに、被災地の速やかな復旧・復興をお祈りいたします。今般の大震災は、自然科学、人文・社会科学、医学、工学等を問わず、自然の猛威に対する学術の意味を我々に見せつけました。この貴重な教訓から多くのことを学び取り、新たな時代のために学術研究と人材育成を前に進めていくことが、今、我々の責務であると考えます」。
(B)「一方、我が国は、少子高齢化や長引く経済の停滞など、多くの深刻な課題を抱えています。世界に目を転ずれば、アジアの国々をはじめとする新興国が力をつけ、世界的な競争が激しさを増しています。また、多くの人類的課題の解決に、長期的な視野をもって我が国が貢献していくことが求められています。こうしたなかで、我が国の国民生活の向上と社会経済の発展の土台となる「知」を創造するものとして、学術研究の振興とそれを担う人材の育成がますます重要となっています」。
出典はこちら:安西祐一郎「日本学術振興会について(平成23年10月)