出歯亀が冒険=危険な思索たるゆえん

「大人たちはどのようなゲームを楽しんでいるのだろうか?。ラインマンとスコットは『ドラマとしての社会』の中で次のように主張する。

 現代人にとって冒険や探検は想像力を刺激するが、ふつうの生活者では冒険はおろか旅行もままならない。すべての現代人が冒険への欲求を満たすことができないにもかかわらず、興奮への希求は存在するので、それを代替的な冒険の中に求めようとする。冒険ができなくなった、すなわち冒険から疎外された現代人に残された最後の“冒険”は、不倫、情事を代表格として、さらに同性愛、フェティシズムマスターベーション、ポルノ鑑賞、あるいは出歯亀など性的な領域における冒険だというのである。

 したがって、ここでのセックスは、既婚者の間で正当化され、かつ怠惰な行為に堕ちぶれ果てたセックスなどではなく、束の間の情事、不倫などの緊張関係を伴うセックスであったり、“道徳的な後ろめたさのある”性的活動なのである。こうして性的冒険においては、生理的な刺激、社会的リスク、心理的リスクが結合する極めて刺激的なものになっているのだ」。

出典:池田光穂「虚構観光論」
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/990310ft.html