越境犯罪に関するお手紙

HHH先生へ

論文拝受、ならびに通読させていただきました。
冷戦期には周縁化されていた越境犯罪が、ポスト冷戦後にグローバリゼーションと相まって、国家内ならびに国家間の統治の問題に大きく焦点化されるが、地域が置かれた歴史的・政治的・文化的ならびに国際ネットワーク的理由によって多様な姿を遂げ、それらの攪乱要因が、越境犯罪取締のグローバルスタンダード化への失敗と、個々の国家の統治効用にマイナスのダメージ(特に国家の再権威主義化や市民社会の民主主義からの後退の危険性)を与えている、という趣旨であろうと思います。
もしこのような理解が正しければ、その趣旨はたいへんよく分かりますが、その将来的な課題としては、このテーマに関する国際比較研究が試みられる必要があります。多くの研究者を動員して、この過程についての総合的な研究が必要ですね。
いずれにせよ、とても重要な課題であると拝察いたしましたし、また私事ですが、文化人類学というかなりマクロな地域研究の欠点(蒙)を啓いていただき感謝しております。