swain and political violence

【リード】エジプト「インフル対策」豚処分に反発 コプト教徒と警官隊衝突 
2009年5月5日7時56分配信 産経新聞
 「【カイロ=村上大介新型インフルエンザをめぐり、少数派のコプト教徒(キリスト教徒)が飼育する豚の全頭処分を決めたエジプトの首都カイロで3日、政府の決定に反発する住民が治安部隊に投石し、治安部隊が催涙弾やゴム弾を発射、双方に負傷者14人(政府系紙アハラーム)が出る騒ぎに発展した。イスラム教で「不浄な豚」は忌み嫌われており、イスラム教徒が9割を占めるエジプトでは、全頭処分に抵抗感は少ない。だが、コプト側からは「インフルエンザを口実にした宗教戒律の押しつけ」と反発する声も出てきた。
 衝突が起きたのは、カイロ南東部ムカッタム丘陵に近い貧困層が多く住む地域。政府は豚の移送に反対する住民たちの抵抗を見越して警官隊を導入したが、300〜400人の住民が「生活を奪うな」と騒ぎ始め、衝突は近くを通る幹線道路にも及んだ。カイロ北郊外カルユビーヤ県のコプト教徒の多い地区でも同日、住民と警官隊の小競り合いが起きた。
 エジプト政府が国内で飼育される豚約35万頭を殺し、当面、冷凍保存するとの決定を下したのは先月29日。イスラム勢力のムスリム同胞団系の国会議員らが人民議会(下院)の議場でマスクをして「豚を処分しろ」と騒いだこともあり、議会は28日、「全頭処分」を政府に勧告した。
 エジプトでは鳥インフルエンザの死者が26人にのぼっているが、新型インフルエンザの感染者は未報告。国連食糧農業機関(FAO)は、新型インフルエンザが人・人感染であることから、エジプトの決定を「間違った判断」と批判したが、政府は方針を変えていない。
 エジプトでは、コプト教徒が伝統的にカイロ市内などのゴミを回収し、集めた生ゴミを豚の飼料にしてきたという経緯がある。3日に衝突が起きた地区は、ゴミ回収業者と豚飼育が表裏一体となってきた地域で、豚の飼育環境については長年、衛生的な問題も指摘されてきた。政府は今回の騒ぎを、豚を郊外の飼育場に移す好機とみた可能性もある。だが、コプト教徒への補償や新しい飼育環境、35万頭もの豚の冷凍保存が可能なのか−など、具体的な点が不透明なまま突っ走った観は否めない。
 コプト宗教界は、この問題が「宗派対立」と受け止められることを懸念し、信者たちに政府の措置を受け入れるよう呼びかけている。しかし、地元独立系紙シュルークなどによると、コプト教徒の側からは「イスラム教による恐るべき犯罪」(一般最高裁に相当する破毀(はき)院判事)といった激しい声も出ており、イスラム教徒に対する感情的なしこりを残しそうだ」。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090505-00000065-san-int