メラニン問題

◎なぜ食品とは関係のないメラミンが添加されていたのか?

→「窒素含量が高い工業用化学物質であるメラミン(分子量あたりの窒素割合66.7%)が、飼料の見かけの蛋白質含量を多く見せるために小麦グルテン、その他の蛋白源に不正に添加されたもの(欺まん材)と推測しています」。

◎メラミンの単独毒性は低い、しかし……

→「(米国のペットフードの)リコール対象のペットフードの影響を受けていたとみられる動物の腎臓内にあった結晶を分析したところ、シアヌル酸70%とメラミン30%で構成された極度の不溶性物質であったこと、ネコの尿サンプルにシアヌル酸とメラミンを混ぜたところ、短時間に腎臓内にあった結晶と類似の結晶が形成されたことも発表しました。/比較的低濃度のメラミン単独では毒性が低くさほど問題とはなりませんが、メラミンとシアヌル酸が共存したことにより結晶を生じて腎臓障害を被ったと推察されています。/なお、この他にアンメリン、アンメリドの2種類のメラミン関連化合物も、今回の動物の死亡・発病になんらかの関連があると見られており、現在、研究が進められています」。

◎メラミンが検出されるまでのストーリー(メラミン検出は当初想定外)

→「平成19年2月以降、米国で発生したペットの病気や死亡の報告を受けて、FDAは原因究明を開始し、ペットフード製造に用いられた小麦グルテンに原因があるとし、その汚染物質を調査しました。小麦グルテンは中国産でしたが、最初に疑われた汚染物質はニューヨーク州農業市場部から報告のあったアミノプテリン(葉酸合成阻害剤、ネズミ駆除剤)でした。しかし、この分析結果は他の検査機関では確認されませんでした。FDAはビタミンD、エチレングリコールジエチレングリコールプロピレングリコールカドミウム、水銀、鉛、ヒ素亜鉛、カビ毒などを疑いましたが、これらは検出されませんでした。ところが、ある企業が回収対象ペットフードからメラミンを検出し、FDAがこの結果を追試・確認しました。さらにコーネル大学動物健康診断センターは、当該ペットフードを摂取したネコの尿及び腎臓からメラミンを検出しました。/FDAは追跡調査の結果、小麦グルテン以外に中国から輸入された米蛋白質濃縮物がメラミン及びシアヌル酸などのメラミン関連化合物に汚染されていること、また、この米蛋白質濃縮物はペットフード製造に使用され、そのペットフード残渣が家禽やブタの動物飼料製造に使用されたことも確認しました。メラミン及び関連化合物を含む飼料を与えられたブタやニワトリ由来の豚肉、鶏肉、鶏卵をヒトが食べた場合の健康リスクについて、連邦機関の科学者は、最悪のシナリオでもメラミンの推定暴露量は安全と考えられる量の約2,500分の1であり、健康リスクは非常に低いと評価しました。/さらにFDAと米国農務省(USDA)は、中国から輸入されたメラミン汚染のある小麦グルテン及び米蛋白質濃縮物は偽装表示されたものであり、実際にはメラミン及びメラミン関連化合物を含む小麦粉であったと発表しました。これまでにFDAは最終製品や植物蛋白質製品等も含めて各種の製品約880検体を検査し、そのうち500検体以上からメラミンを検出しましたが、メラミン陽性検体はいずれも中国の上記2会社の2つのバッチに由来するものでした」。

中国当局の捜査と発表(米国からの依頼を受けて中国が公表)

→「5月8日、中国の国家品質監督検験検疫総局は、江蘇省山東省の2社が製造して北米に輸出されたペットフード原材料に、メラミンが違法に添加されていたと発表しました。米国とカナダでは今年3月、これらのペットフードを食べた数百匹のイヌとネコが原因不明で死亡したため、米国食品医薬品庁(FDA)が追跡調査した結果、中国から輸入された小麦グルテン中にメラミンを検出したことから、中国側に調査を依頼していたものです」。
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以上の出典は下記のところにあります。
◎メラミン添加によるペットフード原材料の擬装(衛生研究所:2007年6月7日)
http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/3f/melamine.html
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◎教訓(これは上記の出典ではなく垂水源之介の私見です)
・食品の保存性を確保したりするための化学物質ではなかった
・食品の成分に関する科学的データを偽装するために利用された
・偽装混入した業者ならびに(多少の科学知識のある)関係者は、メラミンとシアヌル酸がほ乳類の生体内で重篤な腎不全を起こすという危険性を想定していなかった。