母エイリアンになりませう!

annual review of anthropology の最新刊に進化医学のレビューがあります。
なんで人類学かというと、若年性アルツハイマーや難治性の神経疾患のなかに家族性のものが多くあり(クールーもそれが疑われて膨大な家系図が書かれた)、この研究に人類学的な患者をみる全体論と具体的な方法論が必要とされたということがあります。また、食生活などの基本的なことなど、進化医学の基礎研究に人類学的方法と思考法が欠かせないのです。
モレキュラーな生物医学のシステムに寄生しつつ、しかし同時にはらわたを食い破る可能性があるのが進化医学(=寄生虫)です。この寄生虫にエイリアンのシリコンの血液ならぬ方法論という甲冑を提供するのが医療人類学という可能性があります。つまり、進化生物学の亜流の「ダメ学問としての進化医学」(=シリコンの血液を持たない寄生虫の幼生段階)には首肯できないが、分子生物医学を別の角度(=人類学的全体論)から脱構築する作用をもつ「危険な学問としての進化医学」(十分美味しい学問の汁を堪能した後で、次世代のための宿主を探してあげるために腑食い破り新しい宿主を探す母エイリアン)には可能性を見出したということです。