ケアの動詞の機能的起源について

ケアの語源である、caru,cearu は苦しみという用語に由来する加藤直克(2006)の主張は、それが歴史的語用論の傍証がないかぎり、私は承服しがたいね。
OEDによれば英語のcare は11世紀のフランス地方の古語のcure に由来し、その語源はいわゆるケアや配慮である(さらには他人のために心配するという意味の)ラテン語のc ū raにたどれる。
オックスフォードラテン語辞典では、curaは、一般的な1.ケアの他に文中で指摘されている2.不安や心配あるいは関心という用法を二義的に紹介しています。caru はラテン語のcura のうち2.不安や心配の意味を一義的に示す用例がアングロサクソンの古典的用法としてあったようだ。
ケアという他動詞と、caruという自動詞の、機能が同一の語源をもつのは、ケアするものとケアされるもの相補性の歴史的起源を示唆するもので興味深いが、証拠――とりわけ語用論の例示や文法的説明――なしに勝手に主張されても、よくわからない。むしろ、自動詞と他動詞と、動詞の機能によって、対象への行為と、対象がもつ状態の使い分けとして、文法的にクリアな説明ができるからだ。また、そのような仮説を、権威ある主張として、熟考なしに利用して、自分の主張に使うのはアホとしか言いようのない悲惨なものだ。