医学気象予報

「「晴れのちぜんそく注意」―。中部大学(春日井市松本町)応用生物学部の須藤千春教授(65)=医学博士=らインターネット上に「医学気象予報」のサイトを立ち上げて2週間余。愛知県の補助を受けた健康長寿産業育成事業で現在は風邪、気管支ぜんそくの予報だけだが、今後対象疾病を広げていくという。「健康環境情報」が将来、天気予報並みに身近になれば疾病予防に大きく貢献する可能性がある。(な)/須藤教授は「世界保健機関(WHO)が地球温暖化に伴う病気の発症研究について提言。わたしはダニから家、住環境、都市などを研究しており警報システムづくりは温暖化対策になると考えた」と研究の契機を話す。/医学気象予報は気象と病気の関連研究に基づく発症予防や治療支援のための情報提供システム。ぜんそくや風邪、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞(こうそく)などの特定の病気は気象の変化によって発症または症状が変化。ここに着目してドイツでは1950年代に病院、医師向けに始動。日本では60年代から試みられているが須藤教授らの研究は飛躍的に発展させた完成度の高い新システムといえる。/須藤教授らは名古屋市消防局の救急搬送患者数と気象要素との関連を検討して精度の高い予測システムを開発した。収集した95年からの救急搬送データは約50万件、60疾患に及び、膨大なデータの分析は世界でも屈指とされる。/「最初は気象が疾病に本当に影響しているかどうか分からず、関連予測も難しかった。今は予測の精度を上げるために予報の利用者からの声を集めるとともに科学的に検証するシステムをつくる準備を進めている」/予報は県内で「かぜ症候群危険度・大」「ぜんそく危険度・中」などと表示。2月6日にスタート、毎日更新。アクセスは多い日は2万件以上で、1日平均5600件ほどで滑り出しは順調そのもの。研究助手を務める学部3年生の小島光博さん(21)は「例えば予報を見て出掛ける前にぜんそくの薬を服用するなどすれば発症抑制効果が期待できる」と可能性を指摘する。/予報は県が2007年度の「健康長寿産業育成のための地域連携実証事業」に採択。事業は同大、日本気象協会、アレルギー支援ネットワークなどと連携したもので136万円が補助された。県は「一定の効果が確認できた」と評価。「それぞれの専門家集団がしっかり連携、分析しているのが強みです」と小島さん。/今後の方針と将来的な展開、可能性について須藤教授は「(研究は)まだ始まったばかり。「話のねた」から有効性のあるものにしていく実証段階。発症要因と気象との関係などの研究を進め、対象疾病を数10に増やしたい。具体的には夏の暑さによるストレスが一因とみられる胃腸障害、冬の狭心症、脳内出血、腰痛など。風呂場での転倒や交通事故などの警報が出せるかもしれない。詳細な情報提供のため将来、医学気象予報センターといった組織を立ち上げたい」と意欲的。/画期的研究は行政、医療関係者の支援、協力でさらに大きな成果を生みそうだ。
 医学気象予報のアドレスはhttp://www.medico−weather.jp/