システム・ブレイク・ダウン!

「5月27日の全日空のシステム障害は、週末を襲ったトラブルだったが、このような大規模な事例ははじめてではない。2003年3月21日には、通信制御プログラムの変更をきっかけにチェックインシステムの障害が顕在化し、150便の欠航を出している。また、2005年9月には、機内預かり手荷物を仕分けするシステムのダウンも発生している。/実は全日空は、国内の基幹システムを2007年以降にメインフレームからオープンシステムへ全面刷新しようとしている。この基幹システムは、国内線の予約や航空券発券などを扱っており、これまで約30年間にわたって使用し続けてきたものだ。/企業の重要な業務運営を支える基幹システムは、コンピュータベンダーの協力を得て1960年代からメインフレーム上でシステム開発が行われてきた。基幹システムがダウンすれば企業の存続に大きく影響するため、特に処理の安定性や信頼性が求められる。従って、いまだに多くの基幹システムがメインフレーム上で動き続けている。/しかし、メインフレームの維持費用は高くつく上、ベンダーの独自アーキテクチャーであり柔軟な変更が難しい。これをオープンシステムへマイグレーションすれば、維持費用が安くつくだけではなく、割引運賃など新サービスの開発期間を大幅に短縮できるメリットもある。全日空の次期国内旅客システムは、大手航空会社では、メインフレームからオープンシステムへ全面刷新する初のケースといわれている。/今回の障害原因の詳細についてはまだその全容は明らかにされていない。しかし、これまでの類似事例から、オープンシステムゆえの複雑性増大、エンジニアの不足、リスク管理の不徹底があると見る。/PCの価格性能比の飛躍的向上や安価なソフトウェア製品の登場によって、ユーザーの選択肢は大幅に広がり、1990年代から、オープンシステムによるシステム構築が大きく普及している。しかし、単一ベンダーによるサポートで済むメインフレームとは異なり、オープンシステムでは、さまざまなハードウェアやソフトウェアの組み合わせについては、自ら保証していく取り組みが必要となる。これをすべて検証するのは難しく、そこにリスクが内在しやすい。/また、エンジニアの不足も考えられる。Webシステムが全盛の昨今、各種のIT教育機関Javaなどの言語教育に力を入れている。若手のうちからメインフレーム系のエンジニアとしてのスキルを身につける機会が少なくなってきているのが実情だろう。しかし、都銀や航空会社などでは、いまだにメインフレーム上のシステムを改造するケースが多く、エンジニアの絶対数が不足しているのだ。/さらに、リスク管理の視点も重要だ。企業のビジネスが情報システムに大きく依存する中、情報システムの障害は、企業に深刻なダメージを与える。障害を未然に防ぐためには、リスク管理の徹底が求められる。/そんな中、この4月には、情報システムの信頼性向上に向けて、経済産業省より「情報システムの信頼性向上に関する評価指標(試行版)が公開されている。これは、情報システム障害の社会的影響が日々、深刻化してきていることを受けて、2006年6月に公表された「情報システムの信頼性向上に関するガイドライン」に基づいている」(www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0705/29/news011.html)。