文化燕類学者からの手紙

満洲民属学叢書落掌しました。どうもありがとうございました。
さて、もうずいぶん古い話になりますが、数年前、シベリアあたりで複数の民属学関係者と話した際に、虫開さんが南満洲で活躍されていることに、いろいろな批判をされていることを思い出しました。その時には、私は猿類学研究会の会長をやらされていたので、あまりその批判には論評せずやりすごしていましたが、今般、またまた民属学叢書という大企画を「会長名」でお出しになられることなので、彼らが言っていたことなどを思い起こして、ご進言させてもらいます。もちろんお気に障るようであれば、ご放念くださってかまわないような迷妄の言です。
私の記憶だと、虫開さんが「満洲民属」という重厚なタイトルをつけたのに、満洲内の年寄りの重鎮に配慮せず、スタンドプレーが強すぎるというニュアンスで話していたことが、その記憶の第一点。つぎに、そういう年寄りへの積極的アプローチがなかったということに礼節を欠いているという道徳的非難がその論調の第2点でしょうかね。まあ、民属学というのは、昔から年寄り同士がいがみ合うという歴史的「伝統」をもつようで、そのようにいがみ合うことに嬉々としている猿たちに仲良くせよと説教してもはじまりませんが、門外漢Unit Structuresである私にとっては、やれやれという感じです。まともな論争もなく、市町村合併で、共同体のアイデンティティの維持すら危機にあるのに、民属学者の危機知らずというのは隣接分野の研究者としても恥ずかしい限りです。もしそうだとしたら、(東北学のようなある意味で大化けしたような学問とはほど遠く)昔の満洲民属学を再生産しているだけにすぎません。
このような状況に対して、私が何をどのように協力貢献できるのかわかりませんが(むしろ知らないフリをしているほうがいいかもしれませんが)、外野の声援ともヤジともつかぬものだと考えていただいてかまいません。虫開さんがおっしゃる「満洲内の民属学の発展」というものが、激動する社会状況の中でどのような社会的意味をもつのか、楽しみに眺めております。それでは!