インピーダンス概念が分からないダンス

電気の武者+8 30thアニヴァーサリー・エディションDL-110は高出力のMCで高価なトランスあるいはヘッドアンプがいらないというのは、承前。
私は快適に使っていたのですが、このカートリッジを使いつづけていると、なにやらスクラッチノイズのような音が出るのです。
真空管イコライザーアンプからパソコンにデータを取り込んで入力特性(db)を見てみると、どうやらこのノイズは一定の間隔(20秒〜1分)で一定の強度で出るのです。どうもおかしいとMMに変えると、このノイズは消えるので、レコードの傷ではありません。
というわけで、カートリッジには、インピーダンス(抵抗)と出力電圧の関係に関する独特の特性があることに気がつきました。つまり、MCはコイルの巻きが小さい――なぜなら可動部がコイル――ので、コイルの発電量が少ないつまりインピーダンス――デノンのページでは「電気インピーダンス」と記載――は低く(DL-301で33Ω)、発電量(電圧同DL-301で0.4mV)が少ない。それゆえに、トランスで電圧を上げる。トランスの原理は「入力巻線(一次巻線)の交流電流により変化する磁場を発生させ、それを相互インダクタンスで結合された出力巻線(二次巻線)に伝え、再び電流に変換」するというわけです(出典「変圧器」)。インダクタンスとは「巻線などにおいて電流の変化が誘導起電力となって現れる性質」で「巻線を貫く磁束が変化すると、巻線電流が磁束の変化を打ち消す方向に誘導起電力が発生する」(出典はウィキの「インダクタンス」)。
コイルが短いことと高音が伸びることは関係しているようで[なんでやねん?――電線が長いと高い音が遠くまで届かないというのは素人考えで誤りだろう]、MMは概してMCより高周波数特性が悪い。他方、MMはというと、こいつはカートリッジの中のコイルを多く巻く――なぜなら可動部はマグネット――ことができ(つまりインピーダンスは格段に大きくなるAT-150でコイル・インピーダンス:2.3kΩ(1kHz)/ 直流抵抗だと530Ω――後者は純粋な電気抵抗で、要するにMMないしはVMは発電容量=発電に伴う抵抗つまりリアクタンスを考えないといけないが、私はまだ十分に理解できていない)とにかくMMは発電量(電圧)はでかい(4mV(1kHz、5cm/sec.))。ジャズ系のカートリッジの代表格のシュアーのMMがパンチがあるというのは、周波数特性よりも出力優先して、荒削りの音を優先するということでしょうか。
で、私のDL-110はその中間で、インピーダンスは160Ω、出力1.6mVなのです。ここで、問題はMMの半分以下の出力ということと、インピーダンスが高い、つまりコイルの巻きが長いということですよ。問題はコイルが発電をするということですが、これとどうもインピーダンスを構成する別の要素である静電容量が、どうもMCはMMに比べて低いのではないかというのが私の結論。それが定期的に放電し、真空管のヘッドアップに影響を与えているというのが私の推論です。――あ〜、これがトンデモ系だったらご指摘ください。
過日は、この問題にほとんどの時間の状況の分析と解決[理論がわかるまでは不毛な時間の浪費]に費やされ、そして中1日を挟んで、今日、ヤマハトランジスターのオペアンプを使ったヘッドアンプを持ってきたら案の定、あの嫌なピークノイズが完全に消えたのです。ネットで調べると、真空管を使ったMC用のヘッドアンプはかなりの技術力のいる話とか、だからMCの古典時代はオルトフォンに代表されるような昇圧トランスの黄金時代だったというのです。優秀なトランジスターアンプの登場が、MCのヘッドアンプを内蔵を可能にしたとの説明もどこかにありました。
アンセムの設計者も、DL-110のようなMMクラスの発電量をもったMCが接続されるとは夢思わなかったでしょうから、このような中間型のカートリッジが放つノイズ――まだ仮説でカートリッジの問題ではな真空管イコライザーとのマッチングが本質的問題になった――は予想できなかったのではないでしょうか?――この最後の部分は完全に私の推測ですけど。よく考えれば、イコライザーという名称そのものが、音を増幅するのではなく、音の偏差(RIAA特性=Recording Industry Association of America)を変化させるものという意味だから。
こういう記述はすばらしい「セラミックカートリッジやクリスタルカートリッジは、適正な入力インピーダンスで信号を受け取った場合に、ほぼRIAAカーブに近似した出力特性を持つため、高忠実度再生を要求されない安価なレコードプレーヤーでは、イコライザアンプを省略できるため、コストダウンが可能となった」(出典「レコードプレイヤー」)。
池田光穂(阪大CSCD)