オーディオ道異聞――トランジスターアンプ設計者の現場力

mitzubishi2007-03-05

◎なかなか至言――つまり傾聴し考えるに価する文章――なので、そのまま引用
「私たちオーディオの技術屋は、どんな回路でどんな部品を使ったらどういう音が出るか殆んど判っています。」(出典)「私のオーディオ仲間で小さなオーディオ店を経営している人なんですが、"100dB以上の能率がないとスピーカーとは認めない"とかなり過激なことを言っている人がいます。面白いのは、そのお店に通うようになると、あらゆる高級機器を使ってきた人達が、今まで持っていたオーディオ機器を手放してしまうことが多いんですね。シンプルなフルレンジスピーカーを管球アンプで鳴らすようになり、音はこれで十分と言うようになってきます。つまり、音の変化ではなく、音楽の表情の豊かさを引き出す組み合わせが、自然と判ってくるんだと思います。」(出典
【コメント】音がわかるようになるということで嗜好が変わるのでしょう。オーディオ機器を更新するのは、嗜好が変わるということもありますが、変えた機器に嗜好を合わせるということもやっているのでしょう。大金持ちだと複数の機器を繋げて比較ということもできますが、にもかかわらず音を同時に複数の機械で鳴らせませんので――日本やドイツのメーカーでは切り替え実験で客に好みを選考させるそうですが――結局優劣がついて、単一の機械で聴くようになる。さらに、このページの出典の著者も言うように、購入して持ち帰った機器と設置する部屋のマッチングの問題はあるそうなので、要素の数は複数です。フルレンジと真空管[それもプッシュプル―KT88では無意味なぐらい結構大きな音出ますので―ではなくシングル駆動がプレスティジが高い]というのは、ある意味での価格の高級化[=性能の限界があるのに衒示的消費傾向も含めて同じ性能であれば高い]と(学歴資本と経済資本の両方が高い階級の人たちが共有する傾向がある)生活スタイルのミニマリズムの両立という点で最適化されているのではないかと思われる。

「私は能動的に聴くということはどうしても暴力的に音楽を聴くと言う姿勢を孕むと思っています。音楽は自分の掌中にあるという考え方を無意識にしてしまう危険性があると言うことでしょうか。もちろん能動的に音楽を聴く良さも素晴らしさもあるのですが、能動的な姿勢は音楽の深さを狭めてしまうということの方が多いのです。私は多くの演奏家を知っていますが、能動的に音楽を聞く演奏者も受け身で聴く方もいて、様様ですが、音楽の深さを感じさせ、才能を感じさせる演奏をする人には、どちらかと言うと音楽を受け身で受け止める人が多いのも事実です。ちょっと深い世界に入ってしまうのでここでは書けないのですが、それにははっきりした理由があると思うのです。」(出典
◎と読んできて、これからが強烈!「今のトランジスターアンプは音場の再生に優れやさしい綺麗な音がするアンプが多いのですが、間違った方向に進んでいるような気がしてなりません。もう1年程前になりますが、とある中小オーディオメーカーの試聴室で音を聞かされたことを思い出しました。スピーカーはB&WNautilus、アンプはマークレヴィンソン、CDPがそのメーカーの自信作というものでした。音が出た瞬間、私は試聴室から飛び出たくなりました。評論家のお墨付きと言う、その音はなんとも薄気味の悪い物でした。音場の再現については文句のつけようがなく、美しい音色で、高音低音のバランスも申し分ない音でしたが、生のピアノは絶対にこういう音はしないという音がでていました。あそこまで鈍重なアコースティックな楽器は存在しないし、ピアノなどは何時も不自然な音色が付きまとい、和音がはっきりしない、しかもピアノの場合、基音に、倍音が綺麗に重なってくるのが魅力なのですが(Duplex Scale、デュプレックス・スケールによる音)、基音がちゃんと聞こえないのです。まるでデュプレックス・スケールによる音しか鳴っていないような音なのです。そのピアノの音がとろりと美しく鳴っているのです。気持ちが悪いと言ったらありませんでした。あの音では演奏者の良し悪しの区別はつかないでしょうね。三度の飯よりオーディオが好きで何時も生の音に接していると言う人が音出しをしてくれたんですけれども・・・・・・。オーディオも、ここまで狂ってきているのかと寂しくなりました。何時も生の音に接っしている人ならこんな音は絶対に我慢できないと思うのですが。」(出典
◎20KHzの倍音領域が必要か否かという論争に対しては次のようなご意見・・・なるほど!
「音が違って聞こえるのは、20kHz以上の帯域の有無が原因なのか、20kHzからのローパスフィルターを入れることにより可聴帯域に影響して音が変化したのか原因が特定できないからです。たとえそのローパスフィルターが100kHzだろうが1MHzだろうが可聴帯域に影響を及ぼさないようにフィルターを入れることは不可能なのです。このことはオーディオが好きでいろいろ実験している人ならほとんどの人が認識していることです」(出典
◎と、こうなればオカルトだが、このような話はよく聞く「音が変わった原因がどこかに絶対あると思い原因探しが始まりました。しかし、何も変更していないので、原因と言っても、皆目見当もつきません。かなり長い時間考えた結果、相棒が一つだけ違っていることを思い出しました。前夜の帰り際に、相棒がパワーアンプのGNDに片足だけ半田付けされていたフィルムコンデンサーを外していたのです。そこで同じ位置に同じフィルムコンデンサーを片足だけ半田付けして、片足は空中に浮いている状態で音を聴いてみたら、前夜の音に戻ったのです。面白かったのは、その片足だけ半田付けしたフィルムコンデンサーの種類を変えると、音もそのフィルムコンデンサーの音がしてくるのです。」(出典