おしごと報告

◎本年度の活動報告
G共和国におけるマヤ系先住民、特にS県を中心とした共和国西部のマム先住民の文化運動、特に言語共同体に関する基本的な資料収集と聞き取り調査をおこなった。1996年末の和平合意後の10年目を迎える現政権は、前政権である右派政党に比べ、先住民の官僚への登用も少なく、先住民の言語復権を中心とした社会活動においても、それほど積極的とは言えない状況にある。2006年は4年間の現政権の半期の折り返し点であるが、新聞、テレビなどの報道において、都市部における犯罪集団およびそれに関連する殺人事件や薬物濫用の増加、政府役人による腐敗などの社会公正化に現政権が機能しておらず、国民の不満が、現政権が採用するより積極的なネオリベラル経済政策にあると批判している。言語運動に関する文教政策においては、新しく任命された文部大臣がその施策として初等教育の民営化方針を打ち出したために、全国の教員を中心に大きな抗議行動が継続中である。前回大統領選挙キャンペーン時に前政権時代の国会議長などが右派の民衆暴動事件(Jueves Negro, Viernes Luto)の首謀者としての責任を問う裁判があったが「証拠不十分」のため全員無罪になった。かつての内戦の責任を間接的に問うこのような訴訟案件は不成功に終わることが多く、G共和国の民主化運動を継続している人の間に、より積極的な抗議活動をおこなうべきであると主張する人も多い。他方で、内戦時の民衆の記憶や、内戦に関わった人たちの聞き取りなどの出版は近年になって増加傾向にあり、歴史と向き合う先住民の文化運動は継続しておこっていると言っても過言ではない。観光業に従事する人たちの聞き取りでは、経済統計において観光産業の復調傾向はあるものの(実際、主要紙の経済欄は、ポスト冷戦における有望産業は、経済自由特区における縫製産業よりも観光産業あると繰り返し報じていた)、民族観光などは冷え込んでいると評価する人たちが多くを占めた。