【少子化非常事態宣言】批判

少子化非常事態宣言】批判
 私の論点は次の3点です
(1)少子高齢化による人口減少や都市への人口流出の主張は首肯できる。しかし、地方から都市部を嘆いていても、地方と都市部をもつ都道府県の責務は、それでなくならない。すべて都会(東京、名古屋、大阪、福岡)が悪い、と非難することは、知事会内部の狭量な批判に終わる可能性がある。
(2)「耐え難いような社会保障負担を背負わされるなど、国全体が閉塞感で覆い尽くされる時代の到来をも招きかねない。日本全体の衰退に向けた壮大なシナリオができあがりつつある」ことについての、都道府県の責任について反省が不明瞭である。かつ、国を批判するには、そのトーンが弱く、誰に対して、どのような「危機」を煽っているのかが不明瞭である。
(3)「若い世代が希望を叶え、安心して結婚し子育てのできる環境整備に向けて、国・地方はもとより、地域社会や企業などが世代を超えて協力し、子育てをともに支え合う社会を築き上げていく手立て」や「思い切った政策を展開し、国・地方を通じたトータルプランに総力を挙げて取り組むべき時で」あるが、そのことについての具体的な政策提言がない。知事会は、歎き、そして国になんとかしろ、ということを声高に主張するだけで、自治体が具体的に、どのような戦略を提案するのかかできないほど、無能なのか?――宣言なら誰でもできる。僕たちが聞きたいのは、その宣言で述べられている危機を回避するための、知事会の具体的な行動目標である。
【以下、宣言原文】

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少子化非常事態宣言

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 少子化の問題は、すでに多くの地方において、若年人口の減少により地域経済の活力が奪われ、人口流出に拍車がかかるといった形で顕著に現われている。
 このままいけば近い将来、地方はその多くが消滅しかねず、その流れは確実に地方から都市部へと波及し、やがて国全体の活力を著しく低下させてしまうこととなりかねない。
 しかも、今後の数十年間に高齢者が激増する一方で、労働力人口は減少の一途を辿る。今生まれている子ども達が社会を支える働き手となる時代には、経済規模の縮小に加え、耐え難いような社会保障負担を背負わされるなど、国全体が閉塞感で覆い尽くされる時代の到来をも招きかねない。日本全体の衰退に向けた壮大なシナリオができあがりつつあると言わざるをえない。
 戦後、急成長を成し遂げた我が国が、成熟社会への転換を目指さなければならない今まさにこの時に、国家の基盤を危うくする重大な岐路に立たされていると言っても過言ではない。
 次代を担う子ども達が将来に希望を持てなくなってしまった国には、もはや発展は望めない。直ちに、若い世代が希望を叶え、安心して結婚し子育てのできる環境整備に向けて、国・地方はもとより、地域社会や企業などが世代を超えて協力し、子育てをともに支え合う社会を築き上げていく手立てを早急に講じなければならない。
 今から直ちに取り組めば、将来の姿を変えていくことは十分に可能である。少子化対策を国家的課題と位置付け、国と地方が総力を挙げて少子化対策の抜本強化に取り組み、我が国の未来の姿を変えていくことは我々に課せられた使命であり、今こそ、思い切った政策を展開し、国・地方を通じたトータルプランに総力を挙げて取り組むべき時であることを、ここに宣言する。

平成26年7月15日
全国知事会