労働について

近代の中で、労働(labor)と仕事(work)の分離/分断というのは、いろいろな人に言われているが、もっとも最大の貢献をしたのが、マルクスエンゲルスである。人間の働きが(近代の産業化により)労働と仕事に分離されて、人間(=生産活動をする男性の労働者)には疎外(alianation、法的には「譲渡」という意味がある)というものがおこったという主張です。
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マルクスの恐ろしいほど偉大でありながら全く埋もれていた功績は、公的生活や人間の存在の基礎を家族ではなく労働に求めたことである。労働の呪いからの解放と家族の専制からの解放。政治的生活の基礎である所有からの解放は、政治的なものの家族からの解放のひとつの結果にすぎない」――ハンナ・アーレントの1951年4月のノート(『思索日記 I 』p.101,青木隆嘉訳)。
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ちなみに、7歳から15歳まで失明していた無学歴の哲学者エリック・ホッファー(Eric Hoffer)は、サンフランシスコの港湾で生涯労働者として生活していました。全体主義に関する考察『大衆運動(The True Believer)』がありますが、アーレントは(たぶん)「全体主義の起源」ないしは後の著作のなかで、ホッファーの議論を高く評価しています。