才能があるふりをする大学人の悲喜劇

【才能があるふりをする大学人の悲喜劇】
「経験が教えるところによれば、亡命者と無国籍者が例外者になるちう迂回路をへて正常に近づくためには、もうひとつの方法があった。それは天才になると決意すること、あるいは、それは容易ではないので、天才らしくふるまうことである」――ハンナ・アーレント。彼女の「国民国家の没落と人種の終焉」の章(「全体主義の起源」)中に出てくる奇妙なこの言葉について、僕は先の世紀末から21世紀初頭の「世界に冠たる日本の大学になるべし」という文科省当局の命令のもとでの、チンケな大学人(=知的亡命者とデラシネども)が、そのように振る舞ってきたこと(=天才になれないから同僚の中で/あるいは学生の前でそのふりをする)と、見事に符合することで、これまでの身分を法的に保証する社会的仕組みが崩壊しようとした時に、その環境の中で振る舞う個人がどのようにサバイバルしてゆくのかをがよく見えてきた。僕は同僚よりもよりチンケだと思いたくないが、同じ穴の狢だということには、首肯せざるをえない。