高校生のためのホンモノの食品の物語

【和食世界遺産化に異論】あるいは、
【高校生のためのホンモノの食品の物語】
 和食の世界遺産化で、また知的レベルの底が知れた文化庁長官と和食産業利権のしょうもない話をニュースで聞かされてうんざりする。そんなバカな大人の低レベルなはしゃぎを余所にしていただき、若い高校生や大学生ジュニアの人たちには、次の2冊を是非お勧めしたい:(1)鶴見良生『ナマコの眼』筑摩書房、(2)シドニー・ミンツ『甘さと権力』平凡社。前者は、東北アジア沿岸からスールー海からインドネシア東部のスラウェシまでの赤道地域までのナマコの分布、そしてアジア広域にわたるナマコの商品流通まで生態から経済、文化までを幅広く解説する。ナマコの観点からみると料理の食材は国境を越えて、料理のカテゴリーを国境で区切ることをばからしさまざまざと感じさせる。干しナマコの生き様はそれを消費したり流通させる人間の物語に重なる。そして後者は、奴隷労働に依存するサトウキビ栽培が砂糖の輸出入を通して薬品から調味料になりカロリー源にまで成功する未曾有の文化史。植民地モノカルチャー生産の代表とも言えるサトウキビが世界を巻き込む様を知ることができる。