思想の理解について

思想家による思想は、その人の生涯や当時の社会状況から【まず】理解する必要があります(思想の歴史文脈化)。
しかし、同時に、その主張が、現在の我々の思想として【生きている】ということにも注目する必要があります。たとえば、なんで大昔のカントの難解な主張が、現在の私たち思考や行動の根拠のなりえるのかということ。このことは教科書的に学ぶことはできず、自分で考え自分で理解しなければなりません。しかし手すりや手がかりのない思想の理解は(その偉大な思想家の思想の生成においても)不可能なわけですから、過去の思想の相互参照や、あなた自身の解釈や(場合によっては曲解を含む)修正によって、自らのものにしないとなりません。
思想家も人間ですので、さまざまなエピソードもあるでしょうが、そんなことよりも、その主張の内容の詳細な批判的分析を優先させるべきでしょう。アーレントは、全体主義の「分析」に関して凡百の批評家の著作よりも『我が闘争』を読む方がよっぽど示唆に富むと言ってます。
ヒトラーも含めて)ある思想家の思想を理解する(=自分のものにする)ためには、その思想の強度と対決することを余儀なくされるのでしょう。