誤訳に失望

リベラリズムと正義の限界、の翻訳が酷いというレビューがあった。そういえば昨夜読んだ別の政治哲学の訳書も、delineation を臆面もなく「描写」と訳していた。集団のアイデンティティを論じる箇所で、直後に「グループ分けの詳細な地図を作」るなどと書いてあれば、これはラインを引くこと=多様な集団のアイデンティティのあり方の(恣意的な)「線引き」_描写はラインから構成される_という意味なのだ。件の訳者が「複数の描写がある場合は(妥当なアイデンティティの競合がおこる)」と訳した時に普通は「あれっ?」って思うはずだ。つまり、「複数の線引きがある場合は(その正当性をめぐって妥当なアイデンティティの競合がおこる)」という意味になることは、明白だからだ。結構著名で訳本をいっぱい書いている人なのにあれって思うよね