川喜田愛郎さんの医学概論

川喜田愛郎さんの医学概論を読む。可哀想なぐらいアナクロ、蘊蓄だけでこれと言った主張がない学士院賞が付与された史的基盤のジュニア版。史的検証や実証は目茶苦茶だが論旨明確なフーコーがなぜ学問的意義があるかということが痛いほどわかる。彼の生前の謦咳に一度だけ触れたことがある、先生はとても上品な先生だったが、その学問の内容は、とんでもないmedico-centrism いわゆるエリート主義だ。単純に時代遅れ。かつて東大の佐々木某がバカにみたいに彼に胡麻を摺った本を出したが、あの時の私の生理的嫌悪は間違っていなかったな。沢瀉に異論があるのなら(序文)きちんと言えないところも、貴族趣味的で、なんともはや――いちいち勉強する時にノルベルト・エリアスを知る必要もなし――いけすかない本ではある。こんな本を再度出版する筑摩書房の見識も疑われる。歴史的資料価値だけの本。