悲観主義の効用

「不安(Angst)は、間欠的に流行る情緒であって、いくつかの実存主義の書物を誤読した人たちは、絶望そのものを一種の心理的万能薬にしてきたのである。しかし、もし私たちが、私が解釈するとおりの悪しき状態に実際に陥っているのならば、悲観主義(ペシミズム)」も実のところは、この困難な時代を乗り切るためには決して無しでは済まさねばならない、もう一つの文化的贅沢品なのである」――アラスディア・マッキンタイア『美徳なき時代』篠崎栄訳、6頁、みすず書房、1993年
英語の原文は以下のとおりです。
Angust is an intermittently fashionable emotion and the misreading of some existentialist texts has turned despair itself into a kind of psychological nostrum. But if we are indeed in as bad a state as I take us to be, pessimism too will turn out to be one more cultural luxury that we shall have to dispense with in order to survive in these hard times. p.5

(もと同僚の)篠崎さん訳を参考にして、カゲキ?に訳すると、こうならないだろうか。

「Angst(不安:ドイツ語)は間欠的に流行する情動であり、何人かの実存主義者のテキストの誤読とは、絶望それ自体を一種の心理学的なインチキ薬としたことである。しかしながら、もし私たちがそのように理解したいほど酷い状況にあるのなら、この悲観主義もまた、厳しい時期を生き残るために敢えて(インチキ薬を)投薬しなければならぬほどの文化的贅沢以上のものになるだろう」