神話は人類の知的財産

2年半前(2009)の9月にこの著者のロペス・アウスティン教授御夫婦にお会いし、大学ゼミに参加したことがある。超大物の先生なのだが、事前に送った拙文の内容を覚えてくださり、他の院生の発言に絡めてコメントする。メソアメリカ古代文化に関する知識は博覧強記そのものだが、授業の解説は平易ですばらしい。スペイン語の本か英訳しか知らなかったが翻訳されていることを知り、中古本で購入しさっそく読んでみる。すばらしいのひと言だ。私はグアテマラ側のマヤ系先住民の言語を勉強したことがあるが、CDについているナワトル語の朗読や音楽も楽しい。神話学は一昔に流行ったと思われているが、神話は人類の歴史と共にある超時間的な存在でもある。文章は平易でわかりやすく(構造主義レヴィ=ストロースに比べると)組み立てよりも、神話の中に出てくるエージェントの本質的属性に関する議論に傾斜しているのも、日本の読者には親しみ易いだろう。老若男女を問わず楽しめる本であり、小さいお子さんをもつ親なら、ここで分析されている話を平易に翻案して子供たちに聞かせてみるのも楽しいかもしれない。神話は人類の知的財産と言っても過言ではないからだ。