スピノザにはまだまだ未知の魅力がある

1640年4月のある日、アムステルダムの貧しい一室で一人の男がピストルで頭を打ち抜き自らの命を絶った……と始まる清水禮子『破門の哲学』(1978)。ピストルで頭を打ち抜き自らの命を絶った男性はポルトガル生まれのマラーノで、その名をウリエル(ガブリエル・ダ・コスタ)という。スピノザへのユダヤ教会からの破門は、ダ・コスタ(ア・コスタ)のピストル自殺から16年後の1656年7月とのことです。ダ・コスタの遺書=自伝は『人間的生活の一例』っていうタイトルらしいが、最近の研究ではドラマチックゆえに潤色もあるとのことですよ(ヨベル『スピノザ異端の系譜』人文書院, pp.67-78)