セーフティネット論・課題シート

セーフティネット論・課題シート 2012年05月17日(木)18時〜21時
【課題1】
 以下の資料を読み、老朽化した橋を調査し、その結果に基づき改修したりメンテナンスするための費用便益解析(cost-benefit analysis, CBA)について考え、最適リスク条件を導くための方途について考えてください。(第1章10〜14ページを参照してください)

【資料1】
リスクと向き合う:橋点検、107自治体未実施 老朽化、対策進まず 2012年04月30日(毎日新聞
 全国の地方自治体のうち、管理する橋(長さ15メートル以上)を一度も点検したことのない市町村が、3月時点で少なくとも107あることが毎日新聞の調査で分かった。保有する橋が比較的新しいケースもあるが、点検が遅れている理由として、68%が「費用を確保できなかった」を挙げた。
 橋10件の点検は、国土交通省が09年度に点検費用を助成する制度を導入し、全国に広がった。費用の最大55%を交付する仕組みで、着手した自治体は07年度の1割から、10年度には8割に達した。それでも多くの自治体が予算の確保に苦しんでおり、今回の調査でも、36%が「国の交付金は不十分」と答えた。
 日本の橋10件は高度成長期の1959年に建設数が4桁を超え、これから次々と耐用年数の目安50年を迎える。3月までに点検に着手していなかった107自治体に限っても、未点検の橋10件計2078のうち、築40〜50年未満が382、50年以上も129あった。
 米国では07年にミネソタ州の築40年になる橋が落ち、13人が死亡する事故などが起きており、日本でも問題になり始めている。
出典:mainichi.jp/select/news/20120430mog00m010004000c.html

【課題2】
 課題1で論じた「社会問題」につき、その問題の解決に向けて新しい政策提言を、ある野党がホームページ上に指摘しているものが下記の資料(抜粋)です。この政策提言は、もし採用されたとしたら無条件に成功するものなのでしょうか?/あるいは、どのような社会的条件が満たされれば実現可能になるでしょうか?/または、どのような社会的条件をもってしても非効率で失敗に終わるものなのでしょうか? これまでの議論を踏まえて、資料をみながら皆さんで検討してみましょう。

【資料2】
老朽化した社会資本の再整備で経済を活性化
 東日本大震災を機に防災・減災への意識が高まる中、首都直下地震や東海・東南海・南海連動地震(3連動地震)などへの備えが急がれています。
 その一方で、生活の基盤となる道路や橋などの社会資本の老朽化が問題となっています。
 日本の社会資本は1950年代後半からの高度経済成長期に集中して建設されたため、例えば2029年度には建設から50年以上を迎える橋や高架高速道路などが約51%も占めると見られています【表参照】。老朽化を放置しておけば、大きな被害につながりかねません。
 そこで、X党が提唱しているのが「防災・減災ニューディール」です。大災害に対応するため、防災・減災に向けた施策の工程表を示した上で、老朽化した社会資本の再整備に集中投資します。「災害に強いまちづくり」を進めて国民の生命や生活を守るとともに、新たな需要を創り出すことで、景気低迷が長引く日本経済の活性化にもつなげていきます。
出典(図表も):www.komei.or.jp/news/detail/20120423_7910

【考え方のヒント】
・老朽化したものは、橋梁や高架高速道路、河川管理施設(水門)、上下水道、湾岸岸壁などで、老朽化の程度や、老朽化したものの修復やコスト、あるいは非破壊による検査を通して、どの時期にどの程度の障害(損害やリスク)が発生するかもまちまちです。
・検査をはじめ、修理や改修には財源が必要です。現時点で調達ができうる財源(例:国債の発行)は有限で、幸運にも現時点で資金が調達できても、未来において利子を含めた返済義務があることをお忘れなく。
・リスクを防ぐための費用やリスクに伴う被害の費用も、技術革新や需給関係により多様に変化する可能性があります。
・ただし、費用がかかるからと言って、政策として何もやらないという選択肢は禁じ手です。未来においてそこに住む人たちへの世代間の倫理を守るという課題があるからです。ただし(技術上の革新の可能性もあり)私たちが「良かれ」と思ってやったことが、未来の人たちにとってさらなる「重荷」になったり「迷惑」になる可能性もあります。それらの要因を軽減することも、ここでは推奨されます。