受容美学

受容美学 Rezeptionasthetik
 1960年代末に文学研究から生まれた美学研究上の立場。受容者としての[主体からの]解釈行為の中から作品の意味を考えていこうとする。これに対して、作者の意図に主眼を置く美学概念は「生産美学」と呼ばれ、作品の成立基盤を重視する立場を「叙述美学」と呼ぶ。
「受容美学」の概念的基盤となったのはH・G・ガダマーの作用史概念である。このことを元に、それを定式化したのはH・R・ヤウス(→『挑発としての文学史』轡田収訳、岩波現代文庫、2001)とW・イーザー(→『行為としての読書』『解釈の射程』)を中心とする「コンスタンツ学派」と言われる。ヤウスらは、作者も読者の1人として定位し、作者・テクスト・受容者の3極構造を分析した(『挑発としての文学史』)。ヤウスらは、未だ解釈されていない作品の「期待の地平」が、この3極構造にどのような影響を及ぼすかを解明しようとする。イーザーにとって、解釈される作品にとってもっとも重要になるのは、読者であり、そもそも読者がいなければ作品の存立基盤そのものが揺らぐからである。このアイディアは、文学はコミュニケーションである、という単純化された命題で表象することができる。

文献
Wolfgang Iser, Das Fiktive und das Imaginäre. Perspektiven literarischer Anthropologie , 1991.
出典:
暮沢剛巳「受容美学」www.artgene.net/dictionary/cat74/
ウィキペディア(日本語)「イーザー」http://bit.ly/IiPU56