因果性の観念批判(ヒューム)

・ヒュームの『人間本性論』1739-1740
 ヒュームによれば「因果性の観念の内容は、因果関係をなすものとして見られる対象が近接し、原因が結果に時間的に先行し、原因と結果の間に必然的関係がある」と思えることである。この関係は「原因の必然性を観念間の関係に知覚できない、しかもその必然性は論理的に証明もできない」。ヒュームは、この「観念を生み出す印象」を心のなかに見出す。「心は、繰り返して生ずる類似の事実が頻繁にもしくは恒常的に連接するのを十分な数だけ観察すれば、この規則性が繰り返されるのを期待する習慣を獲得し、ひとつの事実が与えられると、通常それに随伴するものの存在を期待し信」じるようになる、という。「因果性についてのこの分析は、因果関係という観念に根拠を与えるが、同時に因果推論にその制限を課す。つまり事実推論は、過去の経験にのみ基礎を持つのであり、それを未来について確実性をもって適用できるという保証はない。これはいわゆる「帰納の問題」である。ギリシア以来の西欧の知的伝統において、原因に基づく知識は真なる知識の典型とされてきた」ので、これは当時の西洋の推論の伝統からみれば、ヒュームの議論は大きな挑戦(=懐疑論)になった。(神野彗一郎「『人間本性論』」『岩波哲学・思想事典』1998:1238-9)。
出典
「フロネーシスの救出」http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/090318praxis.html