リスク社会と健康コミュニケーション

環境健康リスク論(13)
10月8日(土) 10時30分〜12時00分
テーマ:リスク社会と健康コミュニケーション
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 教授  池田光穂
 ウルリヒ・ベックは『危険社会』(Beck, Ulrich. Risikogesellshaft, 1986)の中で、公刊の直前に起こったチェルノブイリ事故以降の放射能汚染の中で、ある種の社会的カテゴリーの境界が(汚染物質の蔓延という形で)超えられてしまったと表現している。そうであるなら25年後の福島第1原発の爆発まで日本社会はチェルノブイリのことから何も学ばなかったのかもしれない。その証左に、今般の事件後に、一方では原発推進派はこの事故を未曾有で想定外の規模の「天災」と自らの歴史観を変更することなく、また他方では脱原発派は少なくとも爆発は防ぎ切れた「人災」だと前者を非難し、自分たちの歴史に関する同時代的責任を認識していないようだ。厳しい現実とは、かつてのリスクが現実のものとなっただけである。この授業では、現代の健康問題は〈リスク〉を介在して政治の問題になるということを上掲の文献を手がかりにして、ポスト・フクシマの現在について議論する。
第2章「危険社会における政治知識論」を下記のURLにリンクするページのpdfファイル(約1.5MB:ファイル名:Risikogesellschaft86_Ch2.pdf)としてダウンロードし受講前に読んでおくこと。文書には鍵がかけてあります。
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/110825Risiko.html
http://bit.ly/rtKYmv
文献
ウルリヒ・ベック『危険社会』東・伊藤訳、法政大学出版局、1998年