地方分権における先住民コミュニティの自治

地方分権における先住民コミュニティの自治
グアテマラ西部高地における事例の考察―

池田光穂
大阪大学コミュニケーションデザイン・センター

 1996年末のグアテマラのゲリラと政府の和平合意は銃と暴力による治安維持から、法と民主主義による自治へという正常化への途を切り拓いたが、98年ヘラルディ神父の暗殺期以降、治安の悪化の一途を辿り、北米への不法移民によるドル送金による経済の活況は米国のサブプライムローンが破綻する2007年6月まで続いた。和平合意後のグアテマラも復興のための国際融資を受けるために構造調整政策を受け入れ、脱中心化=地方分権化の政策が進み、2002年には「都市と村落開発のための協議会法」が制定された。本発表ではグアテマラ共和国の西部高地の先住民コミュニティにおける水源地の土地確保の問題に関する紛争事例を紹介し、「都市と村落開発のための協議会法」とその運用実態について明らかにした。先住民のコミュニティ成員が、それまでの地方自治制度から地方分権化による新制度の導入に際して、どのように法の正義や自治概念を考え、それらを行動の基盤にしているのか、さらには紛争をめぐる行動の中でそれを正当化する論理をどのように構築しているのかについて考えた。