増田義郎『メキシコ革命』(中公新書)

 昨夜、金沢の古書店で1968年刊になる増田義郎先生の『メキシコ革命』(中公新書)を購入、ホテルに帰り早速、読んだけれど、半世紀近く前の本なのに、全然色あせていない。筆致もリズミカルで一気に読んでしまいました(増田先生40歳の作品よ!本当にすばらしい!)。ヘーゲルマルクス流の史的唯物論からは極北の立場の人だから、冷戦にも耐えたというべきか。おまけに、メキシコ革命の淵源を、スペイン征服期から説き起こしていながら、発展史観でなく、きちんとナショナリズムと関連づけて論じている。最後の(オクタビオ・パスの延長上に)メスティソの文化創造の未来に託しているところだけが、ちょっと古くさく――彼のプチブルジョア階級観というか脱階級史観というか――感じるだけです。ある意味での筋金入りのモダニストだね、増田先生は!
 これに比べると、戒能『小繋事件』(1964)や野沢豊『辛亥革命』(1972)――共に岩波新書――の論述スタイルや記述は、今(2011年)からみると、とても古くさく、古文書を読んでいるような重苦しさとかび臭さを感じる。モダニズムの書記法とは言い難いな。