ケア概念:メイヤロフ『ケアの本質』の場合

メイヤロフ(Milton Meyerhof)はケアを次のように規定しているらしいです(私のものは『生命倫理事典』太陽出版からの孫引きです_字句も変えています)
「ひとりの人格をケアするとは、最も深い意味で、その人が成長すること、自己実現することを助けること」「私が自己実現するために相手の成長を助けようと試みるのではなく、相手の成長をたすけること、そのことによって私が自分自身を実現すること」と言っています。
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この文献は、メイヤロフ『ケアの本質』ゆみる出版で現在でもアマゾンなんかで手に入るようです。
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私は、メイヤロフの上の議論の全部を読んでいないので、かなり偏見もあるかもしれませんが、本人が否定している「自己成長のために、他者のケアをする」と「(結果的に)自分自身を実現すること」というのは、時間的かつ因果的な目的論を導くために、現実のケアの実践のダイナミズムの把握にはちょっと面白くない議論だと思います。おまけに「その人が成長しない、自己実現が期待できない」と見なされている人に、ケア概念はどう適用されるかの議論がないように思われます。たぶんメイヤロフは、ケア実践は「自分自身を実現すること」を導きだすわけですから「ケアというのは本当は自分のためにやるものだ」という屈折した教育的論理を生み出してしまうのではないかと危惧します。
ただし、これも、読んでいないので、このような「偏見」をもって、読解すると、メイヤロフは私の危惧をなんかもきちんとカバーしているかもしれません。つまりこれ以上のメイヤロフについては、これ以上なにも言えませんね。