救急搬送にともなう障碍の人権問題化による解決法

◎「救急「たらい回し」と日米事情」著者:許勝栄(横須賀米国海軍病院救急医療科)出典『医学界新聞』第2820号 2009年3月2日[→リンク
「“patient dumping(ごみを捨てるように患者を投棄する様を表現)”と呼ばれ,1980年代前半から米国で多発していました」
「当時の大統領レーガンのサインのもと,1986年8月にEmergency Medical Treatment and Active Labor Act(EMTALA)という法律が発効し,救急外来を持つ病院を受診するあらゆる患者への医療が法的に保障されることとなりました。」
「患者の保険内容が不明であったことから,14の病院から拒否されます。中には,患者が亡くなった場合に家族が臓器提供同意書にサインをするのなら受け入れます,という病院もあったといいます。」
「,受け入れを要請された高機能病院が転送を断る事例であり,“reverse dumping”として知られることになり,大きく問題視されるようになりました。」
「救急車内の病院搬入前患者に対してもEMTALAが適用され,要請された病院は必ず引き受けることとされているのでしょうか?/答えはNoです。救急車内の病院搬入前患者にはEMTALAは適用されず,ベッドが満床などの理由があれば受け入れを断っても罰則の対象にはなりません。実際,米国救急医療の現場における大きな問題の一つにovercrowding(過密状態)というものがあり,救急車搬送患者を受け入れることができない,という事態が頻発しています」。
「病院側のdiversionary status(受け入れ不能状態)を乗り越えて患者を搬入する権限が救急隊に認められているからです。」
「各地域の病院前救護体制の中で救急隊に与えられている権限であり,切迫する患者の救急医療への迅速なアクセスを保障するためのもの」
「たとえ受け入れ不能とされている病院であっても救急隊の判断で搬入してやむなし,という制度の地域での導入を日本でも検討してみてはどうか,と思われます。」
「「救急隊の判断で」ということが難しいようであれば,「地域メディカルコントロール(MC)担当医の判断で」とする方法もあるでしょう。」