コミュニケーションデザインの定義をめぐるコミュニケーション

コミュニケーションデザインの定義をもとめてウェブを放浪しておる。まったくわからない。
経済産業省がもっとも昔に(つまり通産省時代?)定義したとの未確認情報もある。
グッドデザイン賞に「コミュニケーションデザイン」部門というのがあるので、事務局にメールを書いて照会中である。
そこで、コミュニケーションデザインと定義をかけて検索すると、ウィキのノートが見つかり、最初に定義した執筆者への批判が読み取れる。どうも日本語のコミュニケーションデザインは論争ぶくみの概念らしい。
英語のウィキには次のようにある。
"Communication design is a mixed discipline between design and information-development which is concerned with how media intermission such as printed, crafted, electronic media or presentations communicate with people"(source:Wiki, Communication design).
はずかしながら拙訳を試みると……
「印刷され、作成されたり、電子メディア、あるいはプレゼンテーションのようなメディアとしての中間介在物※1が、どのように人びととコミュニケーションするかと知られているような情報の産物※2と、[いわゆる古典的な※3]デザインのあいだに存在する複合的な修養=ディシプリンが、コミュニケーションデザインである」
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※1:中間介在物(intermission)=和訳では「幕間」と訳されており、これが日本語のレビューアーのバッシングに遭っているようだ。
※2:情報の産物(information-development)と珍奇な訳をしてしまったが、これはなんじゃろか?
※3:ここでのデザインは、情報のデザインとか見てくれ云々(なぜならこちらのほうは「情報の産物(information-development)」というものの該当し、デザインと対比的に措定されているので)というよりは、計画性にもとづく合理的な設計のことを考えているようじゃ。
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実際、この珍奇な英語の定義は、他のレビュアーから出典を示してチョ〜というリクエストが出ている。そのポストが2007年6月なので、こりゃ勝手に投稿、定着されずに冷ややかに放っておかれているようで、レビューが見かねて、なんとかせいという体たらく。したがって、これもあまり信用おけないということになる。
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というわけで変名でメールの内容をご紹介しよう。
「財団法人日本産業デザイン振興会 御中
○○大学コミュニケーションデザイン・センターの教員で垂水源之介と申します。
私の専門は医療人類学で、授業では臨床コミュニケーションというものを大学院生に教えています。
さて、私の職場の名称が上記のとおりなので、現在職業的関心から「コミュニケーションデザイン」の定義について考えております。調べてみますと貴会はグッドデザイン賞の部門/分類名に「コミュニケーションデザイン」と冠したものがありました。ついては、この用語にどのような定義を与えていらっしゃるのか疑問に思い(ウェブページを探してみましたが当該の文章は見つかりませんでした)メールを差し上げました。すでに言及、公表されておられるのでしたらご教示願えれば幸甚です。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、上、よろしくお願い申し上げます。」
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5月16日にお返事がきました。以下のとおり(一部)
グッドデザイン賞では応募対象/審査対象として設定している「コミュニケーションデザイン」について、独自の定義を掲げてはおりません。但し、そこで「応募を受け付ける対象」として第三者に対して開示している内容として、広告やプロモーション活動、広報活動、各種媒体(プログラム、実体を伴った機会)、ソフトウェアなどを挙げています。これらを通じて、特定/不特定の他者に対する意図を持った情報や物質の伝達と提供のために計画・実践されたデザインとしてご理解をいただきたく存じます。」

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そこで、はてなコミュニケーションデザインの定義をアップしておいた。これは垂水源之介の創作である。
コミュニケーションデザインとは、情報のやり取りや対人コミュニケーションのような情動を含んだ広義の交通?と、計画性にもとづく合理的な設計という2つの意味の複合語で、(1)情報通信の効率性をあげるための設計理念や実践という意味と、(2)人間のあいだの適切な対人コミュニケーションの具体的な設計および実践などのことをさす」。
まあ、これも、ウィキの珍妙な定義に劣らずひどいもんじゃと反省する次第。ウェブにおける用語法は進化するという前提で、まず提案することが先決と信じている次第。