super bad!!

草薙厚子ルポルタージュがネット(アマゾンのユーズド)で高値で取引されているようじゃ。版元の講談社は、草薙への検察当局の警告に引き続き、家宅捜索で、びびって再版しなくなったのか。素人には手に入りにくい情報を、元職のルートを通して入手したと思われる草薙と、ほとんどかつての、そして今でもお家芸たる、別件逮捕流戦術でブラフをかける検察、面白いというか、泥仕合というか?――草薙の弄する自己弁護は「真実を知る権利」という、検察や裁判所が独占したい「真実を知る権利は我にあり」という、これも泥仕合だ。超法規的措置にちかい不法な取り調べをしたいなら、いっそのこと被疑者を拷問にかければよいと思うのだが、白状失敗でも――被疑者自殺で片づけられるはず――なんとかなると思うのだが、実態としては、そこまで無茶をしても得るところがないということか。のぞき見趣味のフリーの貴社か、会社の経費で落とせる大名記者だけか――いやいや今頃、情報入手に奔走している馬鹿はおらぬ。というわけで、アマゾンでの扇情的な書籍の紹介をしよう。真実を知る?――馬鹿コケ、スポーツ新聞と変わらないブラックジャーナリズムやないけ? いやいや草薙さんの高邁な精神は、ようするにのぞき見趣味の大衆が不幸の物語を消費するだけ。だいたい供述調書という法的フィクションがいつも問題になるのに、法務畑のこのルポライター、な〜んも警戒してないやないの。それとも犯罪した餓鬼の話の調書はまともで、名前を晒して報道と刑務所で二度処罰する成人の話は信じる。だれもここまで前衛的な虐待は見受けられない。だからゾンビ伝説を人々は求める。あるいは、勉強を鉄拳制裁に変えたら、そのへんの虐待とかわらへんやないの?――虐待に耐えかねて火付け放火のリベンジや〜、罪もない継母ね?ネグレクトという点では共犯なのでは? それとも残虐な父が、懺悔の声明を出したことが気に入らぬ。あ〜、結局なんやねんと知りたくなる。本をかって残虐な物語を消費する。教育問題について考えるという表面的な正当化が、ホラー話を蔓延させる。随分けっこうなことではないか?

「IQ136の天才少年はなぜ、自宅に火をつけたのか――。
2006年6月20日奈良県で発生した事件は日本中を震撼させた。全国でも屈指の
進学校・私立東大寺学園高校に通う16歳少年が自宅に火をつけ逃走、焼け跡からは
少年の継母と異母弟妹の3人が遺体となって発見された。事件後、少年は中等少年院
に送られたが、事件の真相は少年法の厚いベールに包まれていまだに明らかになっていない。
著者の草薙厚子氏は、独自に入手した3000枚の捜査資料をもとに、少年と家族の実態に迫る。
警察が作成した供述調書には、少年の振り絞るような肉声が残されていた。

僕はこれまでパパから受けた嫌なことを思い出しました。パパの厳しい監視の下で勉強させられ、
怒鳴られたり殴られたり蹴られたり、本をぶつけられたりお茶をかけられたりしたことを。
なんでパパからこんな暴力を受けなければならないんや。一生懸命勉強してるやないか。
何か方法を考えてパパを殺そう。パパを殺して僕も家出しよう。自分の人生をやり直そう――。
僕はそう思うようになりました。(「第一章 計画/殺害カレンダー」より)

少年は4歳の時から、医師である父親にマンツーマンの勉強指導を受けていた。
指導はやがて鉄拳制裁とセットになり、少年は十年以上にわたって虐待に近い暴力を受け続けた。
少年はついに、父親殺害を決意する。中間テストの英語の点数が平均点に20点足りない――。
直接の引き金となったのは、ただそれだけのことだった。そして実際に犠牲になったのは、
憎んでいた父親ではなく、罪のない継母と弟妹だった。
本書には、少年が父親を殺そうと決意してから家に火をつけるまで、みずからの心の動きを赤裸々に
記した直筆の「殺害カレンダー」が掲載されている。

父親は少年が医師となることを強く望んでいた。医師となるためには良い大学に行かなければならない。
そのためには勉強を強要するのもやむをえない――。
そうしたひとりよがりの愛情が、いつしか少年を追い詰めていた。
今回の事件は、「特殊な家庭の特異な出来事」と言えるのか。過熱する受験戦争の中、
わが子を「所有物」だと思っているすべての親は、この父親の予備軍かもしれない。
本書はいま改めて、「家族のあり方」を世に問う一冊でもある。