Geopolitically correct!

下記の産経の記事(社説?)は東アジアの地政学的な危機と「国家」の存亡についての布置を描いたという点では、適切なコメントだな。
「 年金記録紛失問題、閣僚の相次ぐ失言などで苦境に立つ安倍晋三首相をほくそ笑んでいる国がある。
 23日付の北朝鮮朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、安倍政権が赤城徳彦農水相の事務所費問題で「さらに苦境に陥った」と論評。そのうえで、「安倍一味(政権)は腐敗政治と決別し、自ら権力の座から退くのが良いだろう」との「安倍退陣論」を展開した。
 北朝鮮メディアが日本の首相退陣を求める論評を出すのは極めて異例だ。言論の自由のない北朝鮮では、労働新聞の論評は、金正日総書記をはじめとする北朝鮮指導部の意思と同義といってもいい。つまり、北朝鮮指導部は、拉致問題解決を強く迫る安倍政権を煙たがり、早期退陣を待ち望んでいるのだ。
 なぜ今回の参院選北朝鮮の望む展開となっているのか。
 一つには、社会保険庁のずさんな労働実態がクローズアップされたが、その批判の矛先が労働組合や歴代の社会保険庁長官より、現政権に向いていることが大きい。特に選挙戦序盤で与野党が責任を押しつけ合う「泥仕合」の印象を有権者に与えたのも安倍政権にはマイナスとなった。
 野党が「政治とカネ」問題で攻勢をかけると、与党側は、民主党小沢一郎代表の資金管理団体による不動産購入問題で応酬した。
 政治評論家の屋山太郎氏は「小沢氏が政治とカネを追及するのは、強盗が家人に『戸締まりが悪い』と説教するようなものだ」と語るが、結果的に国民の「政治不信」は深まった。
 それに追い打ちをかけたのが、「赤城問題」への対応だった。説明責任を十分に果たしていない農水相をかばった首相の支持率はさらに低下。17日、絆創膏(ばんそうこう)姿で報道陣の前に姿をあらわした農水相をテレビのワイドショーをはじめとするメディアは嘲笑(ちょうしょう)の対象として大々的にとりあげ、税財政や社会保障といった政策論争はどこかに消し飛んでしまった。
 「日本ではディベート(討論)型の選挙は定着しないのかなあ…」
 参院選が中盤戦に入った7月中旬のある夜。何カ所もの全国遊説をこなして首相公邸に戻った安倍首相はため息交じりにつぶやき、ソファに体を深く沈めた。
 首相は「選挙サンデー」の22日に積極的なテレビ出演を検討していた。小沢氏が、地方という「川上」を回る作戦に徹していることに対抗するためだ。
 ところが、自民党執行部は「年金や『政治とカネ』の問題で揚げ足を取られかねない」と頑強に反対し、22日の首相の日程は首都圏での街頭遊説に差し替えられた。
 首相には忸怩(じくじ)たる思いが残ったが、これまでのテレビや日本記者クラブ主催の党首討論会での首相の評判は自民党内でも芳しくなかった。
 「堂々と政策論争に挑みたい」という首相の思いは空回りし、年金問題などで反論すればするほど、視聴者には「高圧的」「言い訳がましい」と映った。
 首相はもともと今回の参院選で「国家の根幹にかかわるテーマを正面から問いたい」と考えていた。年初に「参院選では、私の内閣が憲法改正を目指していくことも当然訴えていきたい」と明言したのもそのためだ。
 だが、年金問題をはじめとする「負のスパイラル」に陥り、選挙戦では「憲法改正」はほとんど語られなくなった。
 自民党内の足並みも乱れ始めた。高知選挙区の田村公平候補は16日、「絵に描いた(安倍首相の掲げる)『美しい国』で応援にこられて適当なことを言われたら、バカにされたような気がする」と痛烈に批判した。
 首相批判の急先鋒(せんぽう)である加藤紘一元幹事長は、民主党若手と情報交換を続けるとともに、18日には古賀誠元幹事長を地元・山形に招き、連携をアピール。古賀氏は22日、福岡で谷垣禎一財務相とひそかに会談した。「党内の話題は選挙情勢ではなく、首相の『退陣ライン』になりつつある」(中堅)との声もある。
 参院選の「政策論争なき迷走」はいったい誰を利するだろうか−。(石橋文登)」(www.sankei.co.jp/seiji/senkyo/070724/snk000.htm)