神経科学リテラシーてなものが必要かは別にして……

文理横断的教科書を活用した神経科リテラシーの向上
信原 幸弘(東京大学大学院総合文化研究科 助教授)
神経科学に対する拡大解釈が広がりつつある現在において、一般市民の神経科リテラシー神経科学者の社会リテラシーを同時に向上させる基盤を確立することを目指す。そのために、神経科学者、科学哲学者、応用倫理学者の共同研究により神経科学の基礎理論とその社会的インパクトを扱った教科書やWEB教材等を作成し、その教育効果を検証する。これら一連のサイクルにより、神経科リテラシーの長期的な向上を図る。また、同様の問題が見られる他の科学技術分野においても展開を図る」(http://www.ristex.jp/activity/science/science_2006_04.html)。
◆医学教育
名古屋大学「医学部附属総合医学教育センター(以下、センター)は2005年8月1日に設置され活動を開始したばかりである。設置に至る経緯を概説すれば、当センターは旧附属病院卒後臨床研修センターを基盤としている。一方で、独立行政法人化後の中期目標達成のために附属病院に設置された「臨床教育サブワーキング」において策定された活動方針を踏襲している。それによれば、センターは医学部と附属病院における、すべての職種の卒前、卒後、そして生涯教育の統括的役割が期待されている。
四つの部会の業務(活動)内容は以下である。
1.医学科・保健学科合同教育部会:医学科・保健学科共通教育カリキュラムの作成、教員能力開発(Faculty Development)、および臨床実習の在り方の検討
2.卒後研修部会:附属病院における卒後研修(特に医師および歯科医師)の実施と管理
3.病院職員教育部会:病院職員教育、特に「救急救命蘇生」「接遇」などの共通教育ユニットの実施と管理
4.教育資源管理部会:教育資源管理、特にスキルス・ラボの開発と管理

スタッフ

教授 植村 和正(医学博士)

医学科・保健学科合同教育部会

医学科、保健学科各専攻の教育責任者、病院各部門(看護部、検査部、放射線部、薬剤部、ヒハビリテーション部)の臨床実習担当者による会議を2〜3ヶ月に1回開催している。現在検討中の課題は以下である。
1.効果的な臨床実習の在り方
2.専攻科横断的な共通教育ユニットの開発
3.臨床医教員制度の活用

卒後研修部会

旧附属病院卒後臨床研修センター(1999年に設置、活動開始)の業務を引き継いでいる。業務内容は以下である。
1.医科および歯科研修医の初期臨床研修の管理と実施
2.受託実習生の受け入れ
3.研修登録医受け入れ
4.後期研修カリキュラムの開発と管理

病院職員教育部会

国立大学の独立行政法人化に伴う附属病院改革により、独立行政法人化後の国立大学附属病院のあり方を検討する総括ワーキング・グループの下、2002年12月設置された「臨床教育SWG」を前身とする。医学科および保健学科各専攻、附属病院各部門の代表が「優れた医療人を育成する」という名大病院中期目標達成のために取り組んできた戦略として「全職種共通教育」を開始したのが2003年12月である。救急救命蘇生の講習会には現在までに500名以上の職員が参加している。その他、医療安全講習会や接遇マナーセミナーを開催してきた。

教育資源管理部会

医学部と附属病院の主に臨床教育資源を一元的に管理する目的で設置された。新中央診療棟に置かれる「スキルス&ITラボラトリー」はあらゆる職種の卒前から生涯にわたる臨床教育に必要な教材が置かれ、全国でも最大級の規模を誇る。2006年4月に供用を開始する予定である。主な構成は以下である。
1.ITラボ:e-Learning(40例のシナリオ(MicroSim)を用いたシミュレーション学習)
2.画像診断ラボ1&2
ź)3D画像等の高精度画像診断
˝)ハードフィルムによる画像診断
3.超音波診断(腹部)ラボ
4.ベンチレーターラボ
5.スキルス(ACLSシミュレーション)ラボ&SimManセンター:BLS+AED、ACLSなどの救急救命蘇生実習
6.タスクトレーニングラボ
ź)心肺聴診ラボ
˝)眼底診察、気道管理、中心静脈、腰椎麻酔シミュレーターラボ
7.顕微鏡センター
ź)グラム染色実習
˝)病理組織診断実習
ž)尿沈渣、末梢血検鏡実習
8.OSCE&医療面接ラボ
ź)医療面接等、OSCEに使用
˝)ビデオ撮影による動画を蓄積・編集して教材を作成」

植村和正
研究テーマ:「我々は自律神経系による糖代謝及び循環調節に関する研究を続けてきたが、現在その対象は成人病として併発しやすい肥満、高血圧症、耐糖能異常の相互の連関と発症のメカニズムに関して行っている。具体的には、食餌性肥満に併発する高血圧症の発症メカニズムをテーマとしている。これまでに、高脂肪食摂取により血圧が上昇する現象について、きわめて再現性のある動物実験系を作成し以下のことを報告してきている。/1.カロリーの過剰摂取がなくとも特定の脂肪を摂取することで血圧上昇が起き、またそれは動物性脂肪に特異的である。2.さらにこの作用には内臓脂肪の蓄積、高インスリン血症、インスリン抵抗性の関与が重要である。3.加えて、この血圧上昇は加齢とともに短期間で発現し、それがインスリン感受性の悪化時期に依存するという興味深い結果を得ている。/以上の現象は我々の独自の発見である。内臓肥満は生命予後につながる重大な要因としてその予防や治療が重要視されている。加齢に伴う血圧上昇及び耐糖能異常においても、高齢者における体脂肪率の増加が大きな要因と考えられている。食生活の欧米化、高齢化をむかえたわが国において、食事により引き起こされる耐糖能異常や高血圧症の病因・病態を解明していくことは急務である。このような臨床的な要請の中で、本研究の結果は高血圧症の治療のみならず、その予防に新たな可能性を切り開くものである。」