永久戦争論

永遠平和のために (岩波文庫)公募へのコメント
 私はXOXOさんの心証とは違って、先方は随分、好意的で建設的なコメントを返してきたと思いました。私の心証では審査員の気持ちを忖度すると「財源がいっぱいあれば研究費を給付してあげたいが、実現性の高い他の応募に充ててしまいました。ごめん!」という感じで、雌伏2年頑張れば十分とれるコメントだと思います。以下各論。

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コメント:「戦争と科学」というテーマは、多くの分野の発展に貢献する成果が期待されるという点で領域研究にふさわしい。これに対して、本計画が目指す戦時=冷戦型科学技術体制に関する研究は限定的であるが、旧日本軍占領地等の未解明な領域を含めた15年戦争の国内資料の収集整理などは、散逸が危惧されるだけに重要な基本作業となるだろう。

>>これは本テーマが重点領域でしかやれないという意味で、計画全体の意義を認めたものだと思います。

但し、開示になってきた資料は一部であるため、本研究を大がかりに遂行するためには時期尚早の可能性もある。

>>資料の開示時期と研究の着手の時期に関連性を求めるような、このコメントはナンセンス。論破も難しくないので、次回のヒアリングの時の仮想問題にしておきましょう。

その一方、本計画が網羅する予定の「戦争」と「冷戦」は構造的・歴史的に異質な事象であることに加え、日本、米国、旧ソビエト連邦を対象とした科学史的な個別研究をまとめ上げる根拠と方法についても十分な説明がないため、期待される成果は茫漠としている。

>>コメンテーターはここで、(a)戦争状況(戦時と冷戦)の定義と、それに動員/関与する科学者の社会理論に関するなんらかのグランドセオリーAを求めているのでしょう。それに加え(b)20世紀以降の北半球の広域的な軍事研究の中での各国史(日本・米国・ソ連)の位置づけはどうなんだということでしょうね。西・東・北ヨーロッパ中共のそれらとの関連も、このグランドセオリーBの中で位置づけておけということでしょうか。おまけに(c)方法論の整理もきちんとやっておけということでしょうか。総合的に考えると「このことを明らかにするために『戦争と科学』という研究領域を立ち上げたのですよ」という我々の意図を逆に忖度してくれなかったということも考えられます。しかし審査員は、往往にして研究の〈意図〉と〈期待される成果〉を取り違える強迫観念に囚われるものですから、そのとおりとしか言いようがないかもしれません。グランドセオリー(AとB)研究はそれほど大きくない予算のプロジェクトですすめられますので、別の財源で繋いで引き続き研究しておく必要があるでしょう。

科学技術史に偏った編成で戦時=冷戦型科学技術体制の全体像を把握する総合的評価は困難であると思量されるので、まずは、歴史学的・政治学的考察も含めた個別研究を蓄積し、研究方法論等を確率したうえで大規模研究に着手すべきではないだろうか。

>>「科学技術史が偏った編成」というのは、声をかけたメンバーに偏りがあったということでしょうね。だから、メンツの多様性をもっと広げるか、科学社会学歴史学政治学などの研究者をもっとメンバーとしてリクルートせよということなのでしょうか。私(=文化人類学者)はこの業界に明るくないのでよくわかりませんが、いわゆる「学問界における政治力学的バランス」を配慮せよということでしょうね。もっともこの概念そのものは完全に冷戦的メタファーですね、これも一種の「戦争と科学」ならぬ「科学の戦争」?。ちなみに「確率」は「確立」と訂正すべきですね、言わずもがな。

学会を中心に多くの研究者が参加している点は評価できる。しかし、多くの研究を公募研究に依存するにもかかわらず、具体的な公募研究内容および適切な公募研究確保の見込みが示されてないうえ、適切な国際的研究協力ネットワークの構築に関する説明も不足しているため、研究組織の遂行能力に不安があると判断せざるを得ない。

>>にもかかわらず、多様な研究者を集めている点で評価されていますよ。若手を惹きつけるためには公募研究は魅力的ですが、常勤の研究者は、所属している組織においても「訳のわからん」競争的資金に巻き込まれているために、なかなか業界の重鎮を引き込むことは厳しいので、公募研究の比率を下げるという作戦変更も必要かと思います。国際的協力ネットワークは、すでに実績を積み上げているので、次回以降はもっと評価があがると思います。

順位:  50%以下.[人文・社会系委員会に11件新規応募、3件ヒアリング、2件採択]

>>競争率5.5倍(=採択率18%)の初年度ですから、最初はこういうものです。次回の目標はヒアリング突破(つまり採択)とすれば、気が楽になるのでは。昨年度のXXXさんのご尽力に報いるためにも、今年も[編成を工夫してパワーアップした陣容で]是非ともやりましょう!