Epigraph

Epigraph

「とはいえ今日、アメリカ先住民世界についての新しい考え方が生まれている。フォークロアや19世紀のセンチメンタリズムを超えて、人間をめぐる新しい考え方が出現している。メキシコは―――――アントナン・アルトーが宣言したように――――技術による非人間化と都市の恒久的破局に対立する、あの土着の部分なくしては、存在し得ない。ホルヘ・クエスタからオクタビオ・パスオルティス・デ・モンテリャーノからファン・ルルフォにいたるメキシコ現代文学は、何よりもまず、アメリカ先住民諸社会においてかくも強力な、あの魔術的部分を表現している。このコミュニティの最後の代表者たちの中に、ラテンアメリカの新時代の、酵母が見いだされるのだ。チアパスで、ミチョアカンで、あるいはブラジルの森林、ペルーやボリビアの高山、グアテマラの田舎で、最近の歴史が、それをしめしている。技術権力と地域伝統の平衡なくしては、成功はありえないだろう。利益が最優先される現代世界に対して、アメリカ先住民世界は、そのもろい力、その神話と夢の力、その社会構造の複雑さ、その自然との関係によって、抵抗する。われわれの起源がなんであれ、これらの人々の生存に、われわれは責任を負っている。アメリカ先住民は、われわれにとって他人ではない。かれらはわれわれ自身の一部、われわれの運命の一部なのだ」。
――――ル・クレジオ『歌の祭り』(管啓次? 訳)より