メルケル発言の地政学的意味

メルケルの「ナチス犠牲者に責任があり」の地政学的意味】
 メルケルは、「我々」はナチス犠牲者に責任があると言った。ナチの犠牲者とは、ユダヤ人の他に、ロマ、共産主義者精神障害者などが含まれる。さらには、戦闘でなくなった戦闘員や(それら以外の)民間人のことも含まれよう。メルケルが犠牲者を(明確にユダヤ人と)明示できないのは、ユダヤ解放令以降のワイマール時代まで、ユダヤ人たちもドイツの「市民」だったからだ。ナチス時代における「国民=ナツィオン」の成立が、ヒトラー政権下のドイツ国民を「創造」し、加害者と「ドイツ人ではない」犠牲者に大きく分裂してしまった。また、メルケルが犠牲者=ユダヤ人と認定しまえば、ナチス時代から現在における「ユダヤ人」の存在をドイツ国民として包摂できない、自国の「国民的治癒」が完了していないことが、まるわかりになってしまう。19世紀後半に東欧でうまれたナショナリズム国民主義が、とんでもない化け物を生み出したことをメルケルは十全に理解しており、アンチナショナリズム、それは経済においてEUの盟主となったドイツのEUという政治体制における重要な牽引(=指導)理念なのだ。キャメロンがEU残留を望んでも、時代錯誤の英国独立党が国民投票を牽引すれば、この無責任な島国国民はEU崩壊の道に加担するだろう。同じことが、安倍の安保法制にも言える。彼と同じ狭量な島国根性者どものナショナリズムが東亜細亜の政治的安定をぶち壊してしまうのだ。