プリズムとしての地方政治

プリズムとしての地方政治:グアテマラ・マヤ系先住民の文化と自治(大阪大・池田光穂さん)
 昨2011年の上智大学における研究発表「地方分権における先住民コミュニティの自治グアテマラ西部高地における事例の考察」(『ラテンアメリカ研究年報』No.32, Pp.1-31.)の続編として、本発表では、2011年9月に第1回目の大統領選挙と同時に行われた町長選挙における紛争事例を取り上げ、首謀者が特定しにくい2つの暴力的事件(自動車への放火およびリンチ未遂)と、その後の住民による事件の解釈について考察した。地方分権の理念・枠組み・政策手法は、中央政府や地域文化アイデンティティの強化や援助に携わる欧米のNGOなどを通して、中央から周辺に齎される。他方、地方分権の実態とは、そのような中央からの「働きかけ」に対する、地方政府や市民の「応答」とのダイナミズムの結果として考えられる。中央からの「働きかけ」は法律や政令など均質で一般性をもつが、地方社会自身の「応答」にはさまざまなパターンがあることが示唆された。地方自治体単位の「応答」の多様性について考察するためには、本発表で取り上げたように、ある特定の地方自治体の共同体内部のダイナミズムを詳細に分析する必要があるように思われる。