文化批判としての人類学

さて、先の政策批判という言葉のなかにあった〈批判〉っていう言葉には、べつの深い意味があります。
こちらのほうの概念は、僕たち人文社会学者は、とても大切にします(少なくとも私にとっては)。
それは、非難や論駁というニュアンスよりも、もっと冷静で鋭く、かつ内省を要求するものです。
もうすでに品切れになっているけど、もしこの後者の〈批判〉について知りたいなと思われたら…
マーカスとフィッシャー『文化批判としての人類学』紀伊國屋書店
を読んでみられてはどうでしょうか?
もう僕は10数年以上前に教科書にも使ったし、またゼミでも読んだのですが、これも非常に重要な文献だと思っています。
ぼくたちは全体性を希求しますが、それは「すべてを枚挙する」ということよりも「あるビジョンをとおして一貫した視座を得たい」という欲望のことかもしれません。〈批判〉の概念は、その欲望を相対化するだけでなく、その欲望を現実のものにするための〈変形〉の手続きへのヒントにしてくれるかもしれません。